映画『立喰師列伝』完成披露試写会に潜り込むことができたので、簡単にこの映画の感想について書きたいと思う。
この映画は、そう言って良ければ「原作小説に忠実に作った映画」だろう。原作小説に登場する立ち喰いの話、野良犬駆除の話、ファーストフードの話など原作で書かれたことが可能な限りそのまま、山寺宏一氏の語りという形によって盛り込まれている。観客は、この虚々実々混ざった昭和史の長話、立ち喰いについての長話をギャグを織り交ぜられながらひたすら延々と聞かされているうちに、どこまでが真実でどこからがでっち上げなのかわからなくなり、やがては正体を失ってしまう感覚は、まさに『紅い眼鏡』である。
撮影方法は『ミニパト』方式ということだったが、キャラクターの動きについては『ミニパト』とはかなり違った感じになっていた。恐らく『ミニパト』ではキャラクターがほとんど一枚絵だったのが、『立喰師列伝』では体の各パーツが別々に動くからだと思う。その動きはアニメーションとも実写ともつかない、非常に表現しがたいある意味生々しいものになっている。
何でも一度写真として撮影した素材をモノクロにし、それに人工的に色をつけているということで、画面の印象としては『アヴァロン』に近い。シーンによっては、非常に綺麗な印象が残る。
特筆すべきは、やはり神山健治氏の演技だろうか。私にとっては、他のどのキャラクターよりも印象に残った(出演者の中で一番見慣れた顔であったからかもしれないが)。声は山寺氏によって吹き替えられているが、その表情だけで見事な怪演を行なっている。押井氏が「(『うる星やつら』の)メガネの再来」と言うにふさわしい。
一言でいうとこの映画は「『紅い眼鏡』と『アヴァロン』を足したものをスープにし、その中に日本の戦後史の真実とでっち上げをぶっこんだ、闇鍋のような映画」である。
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『立喰師列伝』にエキストラとして出演した大森望氏の感想も。
ついでに。シネクイント渋谷ではまだ西尾鉄也氏のマウスパッド付き前売り券が残っていた。他の映画館でも結構残っている模様。
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