『青の6号』BD化の技術を取材してきた その1

何度も当サイトでお世話になっている、バンダイビジュアルの杉山潔プロデューサーより、先日また連絡を頂いた。

「今度『青の6号』のBD-BOXが出るんですが、新しいアップコンバートの技術を使用しているので、取材に来ていただけませんか？」

『青の6号』は1998年より全4巻でDVDが発売された作品である。このアニメは、『野良犬の塒』で扱っている押井守監督とは何の関係もないのだが、アップコンバート技術については個人的に興味があるし、杉山氏には色々とお世話になっているので、多少なりとも宣伝のお手伝いができればと思って、気軽に「是非」と答えてしまった。そうしたら後から、AV WatchなどAV専門媒体も取材に来ることになっていることを知って「うぎゃー！」と思ったのだが。私は個人の素人ですよ？

そして当日、取材場所のスタジオに行ってみたら「○○様取材場所は○階です」と紙に貼りだしてあった。普通、こういう時は「AV Watch様」などと媒体名が入るのだが、私は個人扱いのため、私の本名で書かれていた。これは羞恥プレイでしょうか。

もうこうなったら開き直るしかない。技術的、専門的なことは余所の媒体に任せて、ど素人、アニメ好きの個人の視点から書くことにする。完全に同人誌ノリ……って結局いつもと同じような気がするな、まあいいか。

さて前回の取材では『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX（攻殻S.A.C.）』のBD化技術について色々と見せてもらったり話を聞かせてもらったりしたが、『攻殻S.A.C.』は「マスターがデジタルHDソース(1080i)」だった。一方、今回の『青の6号』は「マスターがデジタルSDソース」であり、720dpi×540dpiで撮影されていた。それを1080iのHD(1440dpi×1080dpi)にアップコンバートしてBD化することになる。

SDをHDにする際、単純に画像を拡大するだけでは、ぼやけたように見えたり線のジャギー（ぎざぎざ）が目立ったりしてしまうので、アップコンバート（拡大処理）時に補正を行うわけだが、今回キュー・テック社が開発した新しい技術では非常に美しく、さらに以前より低コストでアップコンバートを行うことができるという。そこで、杉山氏が“代表作”のひとつとして大切にしている「世界初のフルデジタルOVA」で、「先進性とクオリティの高さで高い評価を受け、作品の持つ映像や音声の情報量の多さからもHD化するに相応しい」という『青の6号』を、この技術を使ってBD化して発売することにしたという。

とりあえず実際に画像を見てみました

まずは映像を見せてもらうことになった。まず『青の6号』DVD版をPS3で通常再生。その後PS3のアップコンバート機能を使ってDVDを再生。そして、BD用に従来技術によるアップコンバート処理を行った映像と、キュー・テック社が開発した最新方式でアップコンバート処理を行った画像が表示される。

DVDを通常再生した場合だが、フルHDテレビの大画面では、明らかに画面がぼやけて見える。その後、優秀なことで有名なPS3のアップコンバート機能を使ってDVDを再生するとかなり綺麗になったのだが、最後に見せてもらったBD用アップコンバート画像は、それにも増して明らかに画質が良くなっていた。たまにCGパートで、輪郭線などにわずかにジャギーが感じられる程度であり、「CGは再レンダリングした」と言われても一瞬信じそうになるほどである。色も、DVDの時には明らかに出ていたマッハバンド（色階調の境目）がかなり目立たなくなっていた。ちなみに『青6』BDは片面2層のBDに全4話が収録されており、ビットレートは大体35～40Mだった（音声はTrueHD 5.1ch日本語とリニアPCM 2ch英語、ドルビーデジタル2chのオーディオコメンタリーの3種類だが、作業工程と環境の関係により、試聴することはできなかった）。

以下はサンプルとして頂いた、従来のアップコンバートと新方式のアップコンバートの比較画像。当方では、圧縮方式をPNGに変更して余白をトリミングした以外の処理は行っていない。原寸画像に直接リンクするようにしておいたので、そちらを見て頂ければ画質の差がはっきりわかる。