先日の『CSI:NY』の放送とヒトラーユーゲント

私は『CSI』というドラマが好きで、現在放送している『ラスベガス』『マイアミ』『ニューヨーク』のすべてのシリーズを見ていますが、『ニューヨーク』は他のシリーズに比べて好きになれないところがあります。

その理由はいくつかありますが、理由の一つには他のシリーズに比べて、アメリカ視点の非常に自己中心的な点があると見えるところです(決して私は反米主義者ではなく、むしろ逆のつもりですが)。

そこで先日WOWOWで放送していた『CSI:ニューヨーク5 #22 父への祈り』を見て思ったことを書きます。字幕版の放映はまだですので、ネタバレを避けたい人はこの先は読まないでください。

この話では、「もとヒトラーユーゲントでユダヤ人を迫害していたが、現在はユダヤ人になりすまし、過去を隠してて生きる人物」が登場します。そしてその人物は主人公の刑事に「お前はヒトラーユーゲントのメンバーだった」「ヒトラーを崇拝する順軍事的団体」「任務は、虐殺を逃れようとするユダヤ人の捕獲」と詰め寄られますが、これは事実とは大きく異なります。

まずドラマ中の人物は、1941年から1943年の間ヒトラーユーゲントに所属していたということになりますが、実際には1939年以降、すべてのドイツの青少年男女はヒトラーユーゲントに入ることを義務づけられていました。従って、ヒトラーユーゲントに入っていたことが罪であるならば、当時のドイツのすべての青少年男女が犯罪者になります。

また「(ヒトラーユーゲントは)ヒトラーを崇拝する順軍事的団体」という点では間違っているとは言えませんが、ヒトラーを崇拝するよう教育された彼ら子供達に、いったいどれほどの選択肢があったというのでしょう? そしてヒトラーユーゲントは10歳から18歳までの少年少女の機関であり、その活動内容はボーイスカウト的なもので、将来軍人やナチ党員になるべき人物を育成するためのものでした。言って見れば他の国で始まったボーイスカウトという活動が元々「立派な愛国者、すなわち将来の軍人」を育成する組織なのです。そして「自分の国の将来のため、立派な人間になりたい」と思うことは罪でしょうか?

つまり、この『CSI』で描かれたヒトラーユーゲントの姿は、大きな偏見、あるいは差別を含んでいるものです。

そして、この『CSI:ニューヨーク5 #22 父への祈り』の中でもあったのですが、私はアメリカ製のドラマや小説などで「自分の父は、ヨーロッパ戦線に出征していた」「父は強制収容所を開放した」という表現を何度も見ています。これは「アメリカは正義の味方だった」ということをひけらかしている、あるいは元軍人やその家族の自己満足のために描かれているとしか思えないのです。

もちろん、私はナチズムによるユダヤ人虐殺などを正当化するつもりはありませんが、その一方で終戦後どれだけのドイツ人が、いい加減な証拠のもと、形ばかりの裁判にかけられて収監されたり処刑されたりしたのかが、顧みられることはほとんどありません。

また何かにつけてナチやユダヤ人虐殺を非難することで第二次大戦参戦を正当化するのは、奴隷制度のがかつて存在し、先住民(インディアン)を迫害してきた歴史を持つ国の言い分としても身勝手です。(このあたりは第二次大戦が始まった経緯から語らないとならないので長くなるため割愛しますが)。

さすがにベトナム戦争以後は「我々は常に正義のために戦っている」というアメリカの自身も崩れ、アメリカ国内でも数多くの議論が行われるようになりました。ですが(最近は多少経路の違う作品もあるとはいえ)第二次大戦に関しては「連合国の絶対正義主義」が未だに健在のようです(それが私が、アメリカ製の第二次大戦もののFPSをやる気にさせない理由の一つでもあります)。この点には「ユダヤ人団体や、旧軍人団体の圧力」という要素もあるのでしょう。

夜も更けて眠い中で、思ったことをほとんど殴り書きにしてしまい、あまりまとまりのない文章になってしまいましたがご容赦ください。ドイツ軍人の末路について多少なりとも興味の湧いた人は、クルト・マイヤーの自伝『擲弾兵』などがお勧めください。