作業の合間に見た映画、『ザ・コア』。
地球の磁極が消えてしまった。それは地殻の回転が止まったからだ。磁極が消えたために世界各地で異常気象などの大被害。それで地球の内核まで地球を潜っていって、核爆弾でショックを与えて地殻の回転を取り戻そう……という映画。今まで巨大隕石やら宇宙人襲来やら色々な方法で「地球人類の危機」を作り出してきた映画業界が、そろそろネタ切れかということで強引に地球人類の危機を演出してみて、その問題解決のため「地球の中心まで潜る」というとにかくデキッコナイス (*1)な映画である。
人類はアポロ計画で、月着陸船を作るのに7年の歳月をかけたわけだが、この映画では3ヶ月で地球の内核まで潜る船を造っている。
月面は0気圧、温度は-160~120℃くらいである。そこに行く船を造るのに7年かかった。一方で、地球の外核は130万気圧で4200℃。内核となると320万気圧で5400℃。いやー3ヶ月でそんなところまで行く船を造るんですからな。
で、私はこの映画を見る前に「一体地面の中に潜ってしまったらどうやって物語を展開させるんだ。船からは外は何も見えないし、船の外に出ることも出来ない。ひたすら船内の密室ドラマを描くのか? それとも船を造ってこれから潜るぞというところまでを引っ張りまくってそれでドラマを作るのか?」と想像していた。だが判りやすさと単純さが売りであるハリウッド的アクション映画にそんな演出は許されない。地面の中を透視する機械を作り、それでダイアモンドの地層の裂け目の間を潜り抜けるという曲芸飛行(?)もやってみせる。さらには、マントルの中に浮かぶ水晶洞窟なんてのまで出してしまった。特殊地底服があるから、そこなら船外活動だって可能なのだ!
そして、順調に起こる各種トラブルにより、順調に一人ずつ殺されていく乗組員。最後に内核まで辿り着いたはいいが、「当初の計算予測と違っていたため、持ってきた核爆弾が足りない」というお約束トラブルまで起こる。
で、そうやってもたついている間に地球の磁場に(オゾンホールのように)穴が開いてしまい、そのため太陽風が直接地球に吹き付けるようになった。そのためサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジが溶け落ちる(吊り橋のワイヤーが太陽熱で溶けたため?)。地球磁場が無くなったって大気はあるのに太陽熱がどうして直接吹き付けるんだ……とか、もう何から突っ込んで良いのか判らない。
で、核爆弾は足りないし時間はないしということで、地表の司令部は人工的に地震を起こす地震兵器を使って強引に地球核にショックを与えようとする。だがそんなことをしたら地表も大災害だ。そこで地底船の乗組員は「自分たちで何とかする」と言い張って地表司令部の行動を止めようとするのだが……って隕石映画でも似たような展開がなかったか? そしてここまで読んで賢明な方ならもう気付かれただろうが、地球の中心近くまで潜っていって、まだ地表と交信できているのである! 一体どんな電波ならそんな地中から届くんだ? それとも有線しているとでもいうのか?
こんな展開だったら、穴を掘っていくと地底人類の地底都市が出てきたって許されただろう。いやもうこの映画のトンデモ度合いは隕石映画を超えるかもしれない。
そもそも、映像なしにこの映画のシナリオだけを読んだら、この脚本家は頭がいかれているのかと思われることは間違いないだろう。
スラッシュドット ジャパン 地球の中心まで穴を掘れ
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「ザ・コア」と地球を脅かす仲間たち
原註
- 学研ひみつシリーズ『できる・できないのひみつ』に登場する、「そんなことデキッコナイス!」が口癖のキャラクター。この漫画の中で、「地球を貫通するトンネルを掘って反対側に出ることは可能か?」という話がある。結論は、地球中心は高温と高圧のため「デキッコナイス」……って前にも書いたが。
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