サラマンダー

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先日見た映画『サラマンダー
押井守氏がこの映画のパンフレットに執筆しているということでパンフレットだけは以前に確保していたが、まともに見るのは初めてである。

炎を吐く竜が現代に蘇ったというコンセプトは面白いと思ったのだが、映画で語られるのは、人類が竜に敗れて細々と生き残っている状況である。ヘリや戦車も映画には登場するが、ほとんど活躍していない。
やっぱり予算不足なのか、最後はたった3人で竜の根城に忍び込み、竜の中で唯一のオスの竜(つまりこいつさえ殺せば竜は絶滅する)を、爆薬付きのボウガンといった原始的な武器で攻撃するというものになってしまい、「現代に竜が」というコンセプトを生かし切れていない感じがした。そもそも「人類は核を使って竜に対抗しようとしたが……近代文明は滅び……残った僅かな人々は……」と、「世紀末的な状況で竜に対抗しなければならない状況」を、無理矢理設定として作り出していている。地球人類がほとんど滅びてしまったような事態なのに、それから新しい革命的事実が発見されたわけでも究極の武器が作り出されたわけでもないのに、たった3人で原始的な武器でひっくり返してしまうのだから。これなら「国王に派遣された三人の勇者が剣を持って竜の巣穴に潜り込み……」と同じではないか。わざわざ「現代に竜が」という意味がないのだ。
どうせなら竜と人間の(現代兵器が駆使された)総力戦というのを見てみたかったのに(といってもインディペンデンス・デイみたいになるのも何だが)。

……という話をマイシスターにしたら「近代兵器に殺される怪獣なんて!」ということらしい。やっぱり『怪獣』は、人間の知恵と勇気によって倒されるとか、どこぞの正体不明科学者が作った、一つだけで予備はない最終兵器で殺されないと駄目なのか? だが「現代兵器を巨大生物に対して使用するには」ということをまともにシミュレーションしてみたらかなり面白いと思うのだが。人間は、ずっと人間と戦うための研究を繰り返してきたが、そこで突然未知の生物と戦わなければならなくなった軍人がどうするか……。ミサイルの設定を対生物用にどうすればいいか。ソナー で探知することは出来るのか……。技術的な話ばかりになって、映画じゃおさまりきらないかなあ、やっぱ。

ところで『サラマンダー』だが、飛び回る竜はなかなかの見物だった。「巨体が空を舞っている」というのを、可能な限りCGで自然に描いており、恐らくロード・オブ・ザ・リングの恐るべき獣よりもちゃんとできていただろう(恐るべき獣はどうしても不自然な感じが拭えなかった)。