ニュルンベルク裁判で絞首刑の判決を受けたドイツ国家元帥ヘルマン・ゲーリングは、刑の執行直前に服毒自殺した。その薬をどうやって手に入れたのかは謎だったが、新たな証言が出てきた。
YOMIURI ON-LINE - 国際 ナチス・ゲーリング服毒自殺「私が渡した」元米兵告白
【ロサンゼルス支局】独ナチス政権下で「帝国元帥」だったヘルマン・ゲーリングが連合軍による死刑執行の直前に服毒自殺した事件で、毒物を与えたのは自分だと78歳の元米陸軍兵が名乗り出た。
米ロサンゼルス・タイムズ紙が7日付で報じた。厳重に監視されていたはずのゲーリングの毒物入手方法は、これまで歴史の謎とされてきた。証言によると、ニュルンベルク裁判の衛兵を務めていたこの元兵士は、街角で出合ったドイツ人女性から2人の男に引き合わされ、「体が弱っているゲーリングの常備薬だ」とカプセルを忍ばせた万年筆を受け取り、これをゲーリングに渡したという。
その約2週間後の1946年10月15日、ゲーリングは絞首台に送られる約2時間前に服毒自殺した。元兵士は懲罰を恐れてこれまで黙ってきた。すでに時効となっていることを知り告白したという。
以前WOWOWで、『ニュルンベルグ軍事裁判』という映画をやっていた。元々はテレビ映画だったらしく、前後編を一気に放映という形である。
この映画は第二次大戦直後、ゲーリングや元ドイツ国家社会主義労働者党副総統のルドルフ・ヘスといった、戦犯として捕らわれた者達の裁判の課程を描いたものである。ただ映画としてはゲーリングと、検事の一人に焦点が絞られていた。
この映画はニュルンベルグ裁判の正当性を主張する映画に終わってしまっているのではないかという危惧があったが、ゲーリングといった人物をよく描写していることにより、その点は避けられていると思う。ただ、何故ドイツが戦争に走ったか、つまり第一次大戦のヴェルサイユ条約がドイツ民族に与えた屈辱というものが出ていなかったのは不満である。
あと、やはり前後編の映画とはいっても、この裁判の被告17人を描くには時間が短すぎた。死刑を宣告されたものに対して(直前に自殺したゲーリングを除く)死刑が執行されるシーンは描かれていたが、無罪となって釈放されたものや懲役判決を受けたもののその後は全然出てこない。どうせならTVシリーズでもっと長く、じっくりと描かれたものを見てみたかった。といっても『東京裁判』みたいな映画になってもまた大変だろうが……。
それでこの映画ではゲーリングは看守の一人と仲が良くなり、その看守に自分の時計を譲ったりしていた。この映画に出てきた看守と、このニュースの看守が同一人物かどうかは不明だが。
で、このゲーリング。第一次大戦中はパイロットで撃墜王として有名になり(彼の撃墜数は詐称という疑惑もあるが)、第二次大戦前にはドイツ国家社会主義労働者党(いわゆるナチ党)の勢力拡大に大きな功績を果たした。そして新制ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の大ボスとなった(そのころにはでっぷりと太り、戦闘機のコックピットに収まらないような体型になっていた)。戦争初期、ドイツの勝利に大きな貢献を果たしたルフトヴァッフェは彼のお陰で作られた、とも言えるのだが、それ以後ドイツは、「ゲーリングさえいなかったら戦争に勝ったのでは」とも言えるような状態になってくる。
- ダンケルクから英仏海峡を渡って撤退するイギリス軍を「空軍だけで叩ける」と主張し、陸軍による攻撃は不要と主張したが、実際には多数取り逃がした。
- 「空を飛ぶものはすべて自分の指揮下にある」と主張したため、大西洋での航空偵察情報と海軍の潜水艦の連携がうまくとれず、輸送船団攻撃の戦果を拡大できなかった。
- スターリングラードでドイツ軍が包囲されたとき、「必要な物資は空軍の空輸でまかなえる」と主張したが、実際に空輸できたのは微々たる量だった。
等々。まあもちろんドイツが負けたのはゲーリングのせいだけではないが。
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