『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man』について

TVシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を、笑い男の話を中心に再編集した総集編『The Laughing Man』(TLM)は「新作カット、再アフレコ」が宣伝文句だったが、実際にはその編集内容は「とにかく総集編として整合性を損なわないようにするため」の、かなり小規模なものだった。さすがに、TVシリーズとは異なる解釈を試みるという劇場版『機動戦士Ζガンダム』と同等のことをするには、時間も予算もなかったようだ。再アフレコも全シーンにおいてではなく、編集の結果尺が合わなくなったり、ストーリーの整合性を保つためのセリフの変更が行なわれた部分のみ行われたようである。前にも書いたが、恐らくTLMは「TVシリーズを見て面白いと思ったけど、DVD全巻を買うのは金銭的にちょっと……」という人向けのパッケージのようだ。もっとも、TVシリーズ全巻を持っている人は、2nd GIG BOXの余ったスペースにこのパッケージを入れたいだろうが……(あるいはDVD映像特典のため。映像特典にはSection9 Science File EXTRA"タチコマな日々"、攻殻機動隊S.A.C.の軌跡をたどるドキュメント"S.A.C.アーカイブ"が収録されることになっている)。
新カットだが、TVシリーズ5話、15話、26話を中心に、キャラクターのアップなどで絵柄の統一を図るための作画修正が行なわれているほか、「総集編として話の整合性を取るための新規作画」が多少行なわれている。あと音楽が変更されているためかなり印象が異なるシーンがあるが、音楽変更の理由は「総集編という一つの話の中で、同一の音楽を何度も使わないようにするため」という意図のようだ。では具体的にどのあたりが総集編において変更されたかを挙げていきたい。なお「違いは自分で確認したい」という人はこの先は見ない方が吉。

  • 素子がテロリストを取り押さえた後の荒巻からの通信と、屋上にヘリで現われたバトーの台詞がカット。そこから料亭事件に繋がらないようになった。
  • 山口が主任と会う前、写真を調べているシーンが少し短くされた。また山口からの電話を受けたあとトグサが時計を見るシーンがカット。この時TVシリーズでは深夜1時を過ぎていたので、料亭事件との時間の整合性を取るためカットしたと思われる。そしてこの電話の直後トグサに素子からの連絡があり、料亭事件へと繋がる。
  • 料亭事件の現場での久保田と荒巻の会話がカット。芸者ロボットを操っていたハッカーを追うシーンもカット。料亭事件の背後にあったはずの外務省機密文書の話はなかったことにされた。
  • 山口が事故に遭う瞬間がカット。山口が事故にあったことをトグサが知る時、トグサが見る新聞が修正されていて料亭事件のことがトップ記事になった。ついでにサイトーとイシカワによる、バトーの筋トレグッズの話もカット。
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  • トグサがコーヒーを持ちながら「この写真にはカメラがない」と気づいたところがちょっと短く編集された(トグサが自宅に連絡を入れ、それを見ている素子のシーンがカット)。またトグサと深見が会うシーンもカット。「ションベンの放物線」という言葉も出ず、トグサが直接インターセプターのことに気がついたようになっている。同時にブリーフィングのシーンにおけるトグサのセリフの「深見の話では」という言葉もカット。
  • 素子が情報屋にインターセプターのことをたれ込むシーンがカット。大道が何者かと電話しているシーンもカット、いきなり記者会見になっている。
  • 記者会見を見る素子達、記者会見シーンの作画修正。
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  • 記者会見終了後、そのまま素子の回想による笑い男事件の説明に入っているが、TVシリーズ5話と9話の話を混ぜて、さらに短く編集されている。また素子のアップなど作画修正。素子とくるたんたちとの会話がカットされた関係で、ベッドに寝ているくるたんたちが目立たないように画面が暗くされている。
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  • ナナオ=Aに関する会議をする九課のシーンで、キャラクターのアップなどの一部カットが作画修正。会議のシーンでのナナオの経歴説明が短く編集。TVシリーズでは、素子の笑い男事件についての回想は、この会議の後に入っていた。
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  • 九課がナナオについての聞き込みを行なうシーンがカット。ナナオが電話で深見(?)と話しているシーンのセリフの一部がカット。
  • 同窓会シーンの一部がカット。イシカワによるナナオの聴取記録の説明も一部カット。
  • 所轄が監視していたナナオが偽物と分かるシーンが、音楽も違いかなり印象が異なっている。作画も修正。
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  • ナナオが殺される直前の深見との会話がカット。
  • 笑い男の模倣者のうち、狙撃手とバイク男がカット。大道が救急車で送られていった後の素子とサイトー達の会話がカット。
  • 笑い男の模倣者尋問のシーンでの大男がカット。その後の素子とバトー達との会話がカット。荒巻と素子が入院中の警視総監に会うシーンがカット。だがカットシーンに入っていた「すべてが同じ色に染まっている」という素子のセリフは挿入位置を変更されて生き残った。神山氏はこのセリフを重要に思っているらしい。
  • 授産施設に向かうトグサのセリフ「笑い男事件の後片付けもまだだってのに……」が追加。あくまで授産施設に向かうのは別件の捜査ということになっているが、笑い男の話しかないTLMの中ではやはり違和感がある。
  • 授産施設の中のシーンがあちこちカットされて短くなっている。
  • トグサの潜入捜査の話が切り替わり突然タチコマが登場、TVシリーズ15話相当の会話をするが、TVシリーズでの「少佐の自分たちに対する態度がおかしい」という話は無しにされ、笑い男事件におけるスタンドアローン・コンプレックス研究のためタチコマのAIが活用されるという名目でラボ送りになる。その関係でタチコマたちの会話、素子とバトーの会話が大幅変更。「異文化との交流を描くのはいつの時代でもエンターテイメントの基本なんだね」というタチコマのセリフが「配置転換になろうが死の間際だろうが、読書のたしなみくらいは忘れたくないからね」になるなど、関係ない会話も変更されている。素子やバトーのアップなど作画修正。ついでに素子の服装変更。タチコマが素子達の会話を読んでいるシーンのCG処理が微妙に変更。
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  • 授産施設に潜入したトグサの、素子達への報告シーンが短く編集。その後も授産施設のシーンが短くされている。少女が描いていたアオイの似顔絵のエピソードもカット。
  • トグサと授産施設のサイボーグの格闘シーンの音楽が変更。また授産施設に突入した素子達のところの音楽も変更。トグサが描いた笑い男の絵を見た素子のアップが作画修正。アオイが授産施設でミットに書き残したメッセージもカット。
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  • アオイがハッキングによって厚生労働省から書類を持ち出すシーンがカット。またナナオ=Aの記憶の上書きをした者についての捜査で、九課が厚生労働省職員を調査するシーンがカット。
  • 屋上での素子とトグサの会話で、笑い男がセラノを誘拐したシーンの回想がカット。また会話の後、素子が手すりからジャンプして飛び降りるとき、TVシリーズでは空中で何回転もしていたウルトラCだったのが単なる宙返りに変更。
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  • トグサと厚生労働省職員の会話が多少カットされた上で修正、2人ともお互いに敬語を使っている。TVシリーズではこのシーンは、公安(トグサ)が彼女を尋問した後だが、TLMではそれがカットされたため。厚生労働省職員の村井ワクチンに関する説明もカット。またトグサのセリフによるひまわりの会説明の一部もカット。
  • ひまわりの会でのトグサ達の会話のシーンの作画修正。
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  • ひまわりの会が襲撃されるシーンの前に、今来栖とアオイの会話が入っている。TVシリーズではひまわりの会襲撃と今来栖邸襲撃のあとにこの会話のシーンがあったが、今来栖邸襲撃もカット。「(殺された)ひまわりの会の人たちには申し訳ない」から「あなた(今来栖)には泥棒の濡れ衣を着せて申し訳ない」にアオイのセリフが修正。また今来栖とアオイの会話シーンはTVシリーズでは昼だったが夜にされた。ひまわりの会でトグサ達が会話しているのと同時刻にするため。その関係もあって、このシーンの作画が全体的に修正されている。だが、なぜこの時点で早速と今来栖が、ファイルがひまわりの会に渡ったのかということについての説明はない(アオイが自ら話した?)
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  • ひまわりの会襲撃のシーンの中身が一部カット。またトグサが倒れ込むシーンと、新見、今来栖の会話などの前後関係が変化。
  • トグサの記憶を九課の面々が見るシーンを一部カット。またこのシーンでの素子のアップなど作画修正。荒巻が新見に会うシーン、素子達が焼き討ちされた今来栖邸にいくシーンがカット。また環衛星通信傍受網ビッグブラウザについて『エシュロン』という言葉が荒巻の口から出ている。ビッグブラウザとは何かをわかりやすくするためか。
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  • ビッグブラウザの使用シーン、イシカワが老人の脳を並列化して使用するシーンなどがカット。
  • 新見の「馬鹿が、泣きつく相手を間違えおって」のセリフがカット。またアームスーツについて、ゲイルの「これで連中(九課)さえ出てくればいい実戦データが取れるんだが」が「今来栖確保に必要になるとも思えんがな」というセリフに変更されている。荒巻が新見に会ったシーンがカットされ、ゲイルは九課の介入を予想していなかったため。
  • 素子が対戦車ライフルでアームスーツに発砲する回数が減っている。
  • バトーの目がアオイに盗まれたとき、アオイが見えなくなった周辺をバトーがスキャンするようになった。よりバトーのサイボーグっぽさを出すため?
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  • 荒巻が新見を逮捕した後のシーンがカット。同時に荒巻と神崎議員の会話もカット。
  • バトーと荒巻の通信内容が修正。ワクチン接種者リストを持っていた者(アオイ)が何者かという事についての会話はカットされ、「なぜ強制介入班がワクチン接種者リストを回収しようとしたか」探るように指示している。
    パズが厚生労働省人事課に光学迷彩で人事ファイルを取りに行くシーンがカット。荒巻が兄の話を聞くシーン、麻取に襲撃されるシーンがカット。新見が電脳自殺を図ったシーンがカット。
  • 素子の義体交換シーンの一部がカット。そこにやってきたアオイが作画修正。アオイの表情を変更するため?
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  • セラノ邸の「増強されたパトロール」のセリフがカット。
  • 九課が薬島をどう捜査するかの相談をしているシーンで、TVシリーズでは途中から荒巻が入室するが、TLMでは冒頭から荒巻がその場にいる(TLMでは荒巻が襲撃されておらず入院もしていないため)。「アームスーツの出所は」というバトーのセリフを受けるのが「課長はそう睨んでいる」という素子のセリフから「恐らく」という荒巻本人のセリフに変わっており、その後海自と薬島の説明も素子ではなく荒巻本人が行なっている。TVシリーズではこの会話の途中で荒巻が入室してくるが、総集編では終始椅子に座ったままなので、TVシリーズにはいた「立っている荒巻」が画面に入らないようレイアウトが修正されているカットがある。他にも、九課メンバーが荒巻の方向を向いているべきシーンがちょこちょこと修正されているほか、荒巻本人のカットについては、椅子を書き足したり左右反転したりして流用されているものもある。
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  • 笑い男が来る直前、セラノと警官の会話が一部カット。セラノの部屋に笑い男が来たときのセラノとアオイの言葉がカット。
  • 九課がセラノ邸に来たときのシーンが一部カット。
  • セラノとアオイが喫茶店に来る前のシーンがカット。セラノとアオイの回想シーンで、アオイがセラノに銃を突きつけたあとが一部カット。またTV画面にセラノとアオイが映ったシーンで、TVの時報が異なっているほか画面のフィルタ処理が違う(TVシリーズでは途中で20分から21分になるのに、総集編では最初から21分)。
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  • セラノとアオイの会話の一部(身代金要求の話、セラノが警察に受けた尋問の話など)がカット。喫茶店に武装警官が突入するシーンがカット。同時に、武装警官に囲まれたセラノに荒巻が会いに行くシーンもカット。
  • 素子達と、病院から出てきたトグサが再会するシーンが微妙に作画修正。
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  • 九課の話がマスコミにリークされた後の閣議シーンがカット。首相と荒巻の会話の一部がカット。首相官邸から出た荒巻とトグサ、素子の会話がカット。海自の出撃準備シーンの挿入位置が一部変更。
  • ボーマ達が簡易義体を用意するシーンがカット。海自の突入シーンが一部カット。素子達が海自に応戦するシーンがカット。
  • 老人ホームのタチコマのシーンが一部カット。脱出する素子達の会話が一部カット。腕時計についてのバトーと素子の会話が一部カット。
  • 尋問を受けるトグサのシーンがカット。パズを追跡する海坊主の発砲音がカット。パズが情報屋と接触するシーンがカット。九課を制圧した海坊主のシーンが一部カット。バトーが隠し場所から銃を回収するシーンの一部と、素子のセーフハウスを監視するシーンがカット。荒巻と法務省の男との会話がカット。サイトー、イシカワが捕まるシーンがカット。
  • タチコマの「バトー君、天然オイル取っておいてくれたんだ」のセリフがカット。ラボ行き組が「みんな解体されたよ」から「みんな構造解析中だよ」にセリフが変更、また"笑い男事件のシミュレーション"という設定に合わせるためにセリフが変更され、「みんな死を体験できたんだ」のセリフはカット。
  • タチコマと戦闘中のアームスーツ乗員の「今までどこに」のあとの「そうか」のセリフがカット。
  • 「(アームスーツが)2機ともも破壊されたのでしょうか」「判断は私がする」という海坊主と指揮官の会話シーンがカット。
  • 素子が狙撃されるシーンに音楽が追加。
  • トグサの独白のシーンがあちこちカット。銃を持ち出すトグサのシーンの音楽が変更され、印象がかなり異なる。
  • トグサと再会したシーンでのバトーのアップの作画修正。
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  • 図書館での素子、アオイ、荒巻のアップの作画修正。
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  • セラノが駐車場で車に乗るシーン、駐車場から深見が出てくるシーンがカット。