東京都の青少年健全育成条例改正に反対するコミック10社会はすでに、東京都知事である石原慎太郎氏が実行委員長を勤める東京国際アニメフェア(TAF)への不参加を表明していましたが、そのコミック10社会や、これを支持する日本動画協会は、TAFの一般公開日(2011年3月26日、27日)にぶつける形で、幕張メッセにて『アニメ コンテンツ エキスポ』というイベントを開催することを発表しました。
石原都知事は条例改正を推し進めただけではなく、TAFの実行委員長という肩書きがあるにもかかわらず、アニメ・コミック業界に対して「卑しい仕事」「(ボイコットするなら)勝手に自分で決めたらいいじゃないか」「来年吠えづらかいて来るよ」などと挑発的な言動を繰り返したことが、今回の事態に至った一因と言えるでしょう。
「アニメ コンテンツ エキスポ準備委員会」にはアニプレックス、アニメイト、角川書店 、キングレコード、ジェネオン、フロンティアワークス 、マーベラス、メディアファクトリーの名前が並んでいます。そちらに名前が入っていないアニメ制作会社も、各社がボイコットして集客が大幅に減るのが確実なTAFに無理をして参加するメリットはなく(さらに言えば、コミック10社会という版元の意向を無視してまで、TAFに義理立てする必要もありません)、2011年のTAFが空中分解するのは確実でしょう。
ファッショ 石原慎太郎都知事が画策する 東京都議会 マンガ規制条例可決?の愚 - 雑誌記事:@niftyニュース
以前私がTwitterにて書いたことの再掲になりますが、今回の都条例では、
近親相姦は神話や古典文学から物語で使われているテーマだが、都条例改定案が通ると「近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張」していると、18禁にしなければならない。なぜか漫画、アニメだけは。これから漫画、アニメを作る人間は、どこに境界線を置いて作ればいい?
その疑問に対する答えは、あとから担当者の思惑一つでころっと変わる「見解」でしか発表されていない。以前にも書いたがPSE問題の時のように、法律ができたあとで「見解」が180度変わることだってありえる。
実際にそうなるかどうかは解らないが、可能性としては有り得る。それを考えると漫画・アニメでは、近親相姦という物語の大きなテーマの一つが物凄く扱いにくくなってしまう、業界にとって避けるべきタブーになってしまうことは間違いないだろう。「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」もそうだ。
解釈次第では「エロ描写を描くことを目的としたもの」でなくても、近親相姦などを題材にしたら条例に引っかかる可能性が出てきてしまう。「エロ目的」のものなら現行法でも規制できるはずだ。にもかかわらずなぜ新たに表現抑圧となる規制対象を増やさないとならないのか? 今までに実害があったのか?
などなどの問題があります。そして良くも悪くも東京は日本の中心であり、出版社は(生産者も消費者も東京に集中しているため)東京を中心にして考えなければならず、「東京の条例=日本の法」になってしまいます。当然ながら、出版側や漫画家は反対しましたが、結局法案改正は可決されました。
付け加えるならばこの法律改正は「エロ描写のある本が、簡単に子供の手に届く」という問題の解決には何ら寄与しません。そのため「ただ表現規制をしただけ」であり、規制推進派は「効果がないからさらに規制を強めるべき」と言ってくるのは確実と思われます。そうなると本当に、コミック・コードが導入して衰退したアメコミのように、日本のアニメ・コミック文化にも危険が訪れるかもしれません。
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