アメリカ軍が、5月1日にウサマ・ビンラディン抹殺に成功したとの報道が駆け巡っている。
オバマ大統領は「去年8月、ビンラディン容疑者の消息につながる情報を得た。情報は不確かなものだったが、先週、作戦を行ううえで必要な情報を確認できた」と述べ、半年余りかけてビンラディン容疑者の潜伏先を確認したうえで、作戦を実施したとしています。
作戦が行われたアボタバードは、首都イスラマバードから北に120キロ余り離れた町で、ビンラディン容疑者が潜伏していた建物は、パキスタン軍の退役軍人らが住む高級住宅街の一角にありましたが、周囲を高さ5メートルもの壁で囲まれ、中の様子が分からない構造になっていたということです。
一方、アメリカ政府の高官によりますと、今回の作戦については、パキスタンも含め、ほかの国には事前に連絡せず、アメリカが単独で行動したということです。
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パキスタンは部族社会であり、国家よりも部族に属しているという意識が強い。そのためパキスタン軍の一部は反米主義者であり、パキスタン軍に流れた情報はテロリストにそのまま流れてダダ漏れになっていると以前から言われていた(もちろんパキスタンは否定している)。このことがビンラディンの潜伏場所や、アメリカ軍の単独攻撃に影響を与えたのであろう。ただ、パキスタン政府は事前に承認したらしい(しかし具体的にどこを攻撃するかは知らせなかったはずだ)。その後の報道によると、パキスタン政府の事前承認も無かったとのこと。
NHKによると、CIAがビンラディンの潜伏先を特定したという。上のように、衛星地図が簡単に見ることができる現在だが、情報を特定したのはCIAのヒューミント(人間による諜報活動)のようだ。また星条旗新聞によると作戦は約40分かかり、米軍部隊に被害はなく、ビンラディンとその息子、アルカイダの幹部2名、人間の盾にされた女性1名が死亡、また女性2名が負傷したが、建物の外への被害はなかったということである。どこの部隊が参加したかを明らかにしていないが、一部の情報では、攻撃にSEALs、デルタフォースが加わっていたとされる。周囲の一般市民などまで吹き飛ばす付随的損害(コラテラル・ダメージ)を恐れ、爆撃は避けたようだ。
911テロ以前から、アメリカ政府は国連安保理の支持の元、アフガニスタンのタリバン政権に、ビンラディンの身柄引き渡しを要求してきた。だがタリバンの指導者ムハンマド・オマルはこれを拒否。そのため、ただでさえ極端なイスラム原理主義政策をとっていて孤立していたのに、余計に孤立することになった。オマルがビンラディンをかくまっていた理由の一つに、ビンラディンがオマルに多額の資金を提供していたことがあるとも言われる。なお、オマルの消息は現在も不明である。
アルカイダは壊滅するか?
ビンラディンの死でアルカイダは壊滅するかというと、決してそんなことはないだろう。なぜなら現在、アルカイダの一部は分裂して独自に行動したり、ビンラディンとの繋がりがほとんどなくても勝手に「アルカイダ」を名乗っている傾向が強い。攻殻ファンにわかりやすい形で言えば、「みんな勝手に笑い男を名乗って、テロを実行しようとしている」のと同じである。
ではビンラディンの殺害は無意味だったのかというと、そうとも言えない。少なくともビンラディンが直接指揮してきたアルカイダは、後継のリーダーや方針を巡って内紛が起こる可能性もあり、組織が弱体化することは間違いない。もっとも、最近はビンラディンが直接動いていたことはほとんどなく、象徴的存在だったという見方もある。
報復テロの危険?
一部では、ビンラディン殺害に対する報復テロの可能性が指摘されている。確かに、既存のテロ組織が、計画中のテロを早めて実行する可能性はあるし、今回の事件に感化された、にわかの素人テロリストがテロを起こす可能性もある(そのため各地の米軍施設は警戒態勢を取った)。だが結果的には、ビンラディンが生きていても死んでいても、テロが起きる確率は総量的には大して変わらないと思う。なぜならテロリストは、常にテロを起こすことを考えているからだ。「我らがウサマが殺された? 報復だ!」と考えるような連中は、(和平交渉中でもない限り)最初から常にテロを起こすことを考えている。
アフガンやイラクの状況は改善するか?
現在のアフガニスタンやイラクでの紛争は、「部族間での利権争い」という傾向が非常に強い。そのためビンラディンの死は、アフガニスタンやイラクの治安情勢にはほとんど影響を与えないだろう。
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