アプリぴあに連載中の、押井守監督の“師匠たちに教えられたこと”、今度はサッカー監督について話しています。今回もアプリを使わずブラウザから前後編閲覧可能です。
押井守 師匠たちに教えられたこと(第5回) ジョゼ・モウリーニョ&アーセン・ベンゲル【前半】 – ぴあ
僕が興味あるのは監督の采配。チーム作りや戦術、あるいは選手の交代に対する原則とか。要するに、彼らは勝つために何をやっているのか、それに興味があるわけですよ。
それは当然、監督によって大きく違うわけで、僕が好きなそのふたりは極めて対照的。自分の考えるサッカーを実現したい、自分の戦術が有効であることを証明したいというタイプがべンゲル。一方、モウリーニョは勝つためにサッカーをやる。監督はチームを優勝させるためにいるわけで、そのことに特化しなければ勝てないというのが彼なんです。
押井守 師匠たちに教えられたこと(第6回) ジョゼ・モウリーニョ&アーセン・ベンゲル【後半】 – ぴあ
勝たなきゃゼロというのがモウリーニョの考え。僕はこれにいたく感銘を受けた。とりわけ、僕のご贔屓のチーム、チェルシーで監督していた3年間。その3年間、徹底して勝利を目指したわけなんですよ。そのためにはシーズンオフも働く。いかに必要な選手を獲得するか、はたまたオーナーといかに闘うか。本当に凄かった。オーナーは映画でいうとお金を出してくれるプロデューサーですよ。そのオーナーは勝つだけじゃだめで、どうやって勝つか、それも要求してくる。
ほら、プロデューサー、ハリウッドで言うところのスタジオは、映画にいろいろ口出ししてくるじゃない? この原作を映画化しろ、この役者を使え、アクションを増やせ、もっと泣かせろなどなど、あれやこれや言ってくる。それを全部通すことなんてできないから優先順位をつけろというと「全部」と言う。プロデューサーはプラスがあればマイナスがあるとは考えなくて、ひたすらプラスだけなんですよ。
僕が彼から学んだのはその闘い方というか闘う姿勢みたいなものです。映画監督もプロデューサーと闘い、スポンサーと闘い、スタッフとも闘う。ファンやお客さんとも闘うからね。それぞれの勝利条件は違うし、優先順位も変わるけど、彼らと闘わなければいけないという部分は同じだから。