アプリぴあの押井守インタビュー時期、リドリー・スコット編が掲載されております。今回もWebブラウザにより閲覧可能です。
押井守 師匠たちに教えられたこと 第3回 リドリー・スコット【前半】
サー(リドリー・スコット)の『ブレードランナー』を語らずしてSF映画は語れない。『ブレラン』登場以前と登場以後では、まるっきりSF映画が変わってしまったから。
某プロデューサーと一緒に観に行って、そのあと『ブレラン』の何が凄かったのか、彼とずーっと話していた。自分の映画体験を振り返ってみても、決定的と言っていいくらいの衝撃だった。じゃあ『ブレラン』の何が凄いのか? 世界観ですよ。それに尽きる。
たとえば映画の三要素。キャラクター、ストーリー、そして世界観。この3つが映画の本質だということは、映画の教科書にも載っている。僕はこれについて(ジェームズ・)キャメロンと話したことがあって、彼はこの順番をいつも強く意識して映画を作っていると言うんだよね。
彼の順番はまずキャラクター。観客が共感してくれるキャラクターを作るのが映画にとって最重要というわけだ。2番目にストーリー。起伏があり、仕かけがあって観客が飽きないような物語を生み出す。そして最後に世界観。まあビジュアルですよね。
でも、僕の映画作りはその逆で、まずは世界観、それからストーリー、最後にキャラクターがくる。世界観を語るためにストーリーが必要で、どんなシーンを撮るか、どういうシーンを組み合わせるかを考える。そして、最後にその世界観を支えるにたるキャラクターをもってくる。これは観客のため。彼らはそのキャラクターを通じて世界を理解するから。
押井守 師匠たちに教えられたこと 第4回 リドリー・スコット【後半】
僕がいつも言っている、“映画は過去の引用からできている”ということ。映画の根拠は映画の記憶にしかないから、パクリや引用があるのはもう必然なんですよ。無から有は生まれないし、観客も映画の記憶がなければ、その映画を理解するのは難しい。
『ブレラン』が凄かったのは、その過去の引用、僕たちが知っているものだけで世界を構築し、しかもそこに新しい要素を持ち込んだ。それがビジョンなんです。だから僕たちは息を呑んだ。
『攻殻』を作るとき、僕が最初にスタッフに言ったのは「『ブレラン』のコピーはしない」だった。そうならないために、あらゆることを考えたけど、結局は私家版にしかならなかった。それくらいのパワーがあるわけですよ。というか、公開からすでに40年近くも経っているのに、SF映画を作る映画人で、『エイリアン』と『ブレラン』を無視できる人は今もいないでしょ?