日経ビジネスによる押井守監督の「映画で学ぶ現代史」シリーズ、紹介し忘れていたのですが今回は『エレキの若大将』を中心に、若大将シリーズを題材として取り上げており、既に前編、後編が掲載されています。
押井:その時代を表すものっていうのが、それぞれの時代にあるんだよ。でも、映画はとっくの昔にそうじゃなくなった。今の映画は全部マニア向け。普通の人間が見る映画はほとんど作ってない。だからマンガ原作ばかりだし、半分以上は高校生のドラマじゃん。
あれ、いつも思うんだけど、誰が見に行くんだろう? かつては高校のドラマは中学生が見る、大学生のドラマは高校生が見る、という感じではっきりターゲットがわかってたわけ。だけど今の高校生のドラマって結構おっさんも見たりするらしいんだよ。中学生限定じゃないんだよな。
押井:当時は高校生の熱血ドラマなんて中学生ぐらいしか見なかったもん。大学生が見たら「お前恥ずかしくない?」って話だったんだよ。僕も言われたからね。学生のときに「ウルトラセブン」を見てたら「いつまでこんなもん見てるんだ、お前は」って親父に言われたもん。
―それも含めて時代なんでしょうね。
押井:でも今は大人が特撮番組を見るのも当たり前じゃん。うるさく言うオヤジが存在しないどころか、当のオヤジがその番組を見てるから。その頃「ウルトラセブン」を見てた僕ぐらいの連中は、みんなもれなくオヤジを通り越してジジイになりかけてるんだからさ、そんな時代に誰が注意するんだよ。
押井:それがなくなると「文化」自体が成立しなくなる。
―え?
押井:当たり前だよ、文化というのは「価値観の共有」のことだから。僕がいま漠然と危機感を持ってるのは「文化はもしかしてなくなるんじゃないか」ということ。必ずしも日本だけの現象とは思えないんだけど、日本がその先端を行ってることは間違いない。
―ちょっと怖いですね……。
押井:確かに日本は戦後、生まれ変わって「文化国家」になった。ただその文化が、高尚な文化ではなかった。アニメだったりアイドルだったりマンガだったりゲームだったりであって、残念ながら「芸術」ではなかった。まあ、それでもいいと思うんだけどさ。
―しかし、その「サブカルチャー」すら危うくなってきたと。
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