徹底的な言論統制の元に行われた“シネマラボ”設立会見

本広克行が「Cinema Lab」立ち上げの経緯語る、押井守は「監督が試される企画」 - 映画ナタリー
押井守監督「高校生のドラマ」に挑戦 監督絶対主義の新レーベルに意欲 - シネマトゥデイ

 「Cinema Lab(シネマラボ)」は、参加監督たちが、日本映画界に多大な影響を与えたATGこと日本アート・シアター・ギルドに着想を得て発起したもの。監督の作家性を最大限に活かす「監督絶対主義」で映画を制作することを主旨とする。第一弾として『踊る大捜査線』シリーズの本広監督による『ビューティフルドリーマー』が11月6日より公開されるほか、今後も参加監督の新作が順次公開される予定だ。

 押井自身は、今回の企画でこれまでやったことがない作品に挑戦したとのこと。「小中さんが今回、最近の映画は高校生の話が多い、(4人の企画は)高校生という縛りでやらないかって。考えてみたら高校生の話をやった経験はアニメを除けばほとんどない。最初はうーん……ってなったけど、思えばちゃんとしたドラマをやったことはない。自分が苦手だったこともあるし、普通にドラマを作るというのをやってみようって。そう考えたらやる気が出てきた」と若者をキャスティングしたドラマ部分に主体を置いた作品になるとコメント。

もう旧聞になりますが(というか私が怠けていただけですが)一応触れておきます。第一弾が『ビューティフルドリーマー』となる新レーベル“シネマラボ”の設立会見が5日に行われました。それはもう、「ここは中国かロシアか」というくらい徹底的な言論統制の中で。

何が言論統制なのかというと、どこのニュースサイトの記事を見ても『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の文字が全くないこと。予告動画を見た方なら知っての通り、実写映画『ビューティフルドリーマー』にはアニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』をオマージュにした、あるいはほぼまんま再現したカットが大量に登場しておりますが、恐らく配給会社が「この言葉は記事に書かないでください(さもないとお前の会社は出禁にして二度と呼ばんぞ)」という要請(という名の脅し)をかけたのでしょう(日本の配給会社の態度としてはよくあるパターンです)、『うる星やつら』という言葉は全く出てきません。「若い、多くの人に売りたい。少数のオッサン押井守オタクだけが来るようにはしたくない。あとオタクなら勝手にSNSで騒ぐだろう」という宣伝意図があるのでしょう。次の動画内の発言で押井氏が「自分がアニメーションでやったものを……」とさらりと触れただけで、そこを追求するような記事も全く見つけられませんでした。

さらにこの記事内で押井氏は、高校生を主軸にした実写をやりたいと語っています。ですがNHKでも取り上げられたように、既に押井守監督は『血ぃともだち』という映画をシネマラボという名の元で完成させています(これから作る、のではなく、完成しているのです)。ところがその『血ぃともだち』の話題も全く出てきませんでした。アニメ『ぶらどらぶ』とかぶる内容が多い上に、出演者の芸能界スキャンダルの影響がまだあるからなのか、とにかく『血ぃともだち』についてもひと言も触れられず、メディア各社も全く話題にしませんでした。

少なくとも公開前は、場合によってはそのずっと後も、配給会社の意図に沿った取り扱い方しかしない、それが日本のエンタメに対するマスコミの態度です。でも政治家などに対しては何度も同じ質問を繰り返して望む答えを引っ張り出そうとしたり、発言意図をねじ曲げるような取り上げ方をしたりしながら「これが真実を追究するマスコミの姿だ」と言っているんですからね。結局マスコミ=カネってことで……。