忘れ去られていたILCについて押井氏のコメントが久し振りに記事に

国際リニアコライダー(ILC)という計画があります。簡単に言うとどでかい量子加速器で、その国際的施設の建設を日本の岩手に誘致しようという話があり、誘致活動をサポートするというILCサポーターズというものがあり、押井守氏が積極的に参加していました。この活動PRの一環としてわんこそば全日本大会に押井氏が出場し、地元TVに放送されてその映像がバズったなどという話もあります。

ところが新型コロナのパンデミックやらウクライナ戦争やらの影響もあったのかさっぱり話を聞かなくなって、ILCサポーターズの公式サイトも2020年で止まっていました。ですがILCの話自体はまだ潰れたわけではなく、本当に久し振りに押井守氏によるILCに対するコメントが記事になっています。ただ、発言内容はILCサポーターズ発足時とほとんど変わっていません。

押井守氏「日本人変わる契機に」 ILC考、各界著名人に聞く | 岩手日報 IWATE NIPPO

 日本人は成果が目に見えないとすぐに諦めちゃう。科学と言うと、科学技術にしか関心を示さない。でも、技術を実現するのは基礎科学。これに力を入れないと先はない。ILCの建設費についてカネ、カネというけれど、(2021年の)東京五輪にいくら使ったのよ。すぐ経済効果の話になる。分かるよ、生活に直結するから。でも、それって相当恥ずかしい気がするんだ。

 五輪は終わったら施設を税金で維持するしかない。でも、ILCの投資は筋がいい。向こう100年、200年必要な施設で、世界中から優秀な学者が集まってくるから。研究者や家族がお金を地元に落とすとか、工事でお金が動くとかいうけちな話じゃなく、中長期的に世界一の科学都市を造るなんて夢がある。

 何となく「この先(日本は)駄目なんじゃないか」って気分が若い人ほどまん延している。だから子どもたちに「すげえ」と言われるものが何かなければいけない。ILCができれば、目がキラキラなるよね。

ですが私がざっくりと現状を調べたところ、ILCの先行きはかなり思わしくありません。ILCは“国際”の名がついているとおり各国合同の国際プロジェクトとして進められていましたが(そもそもこの計画の規模ほどの巨大な加速器をひとつの国で作るのは困難)、予算の分担の合意、人的資源の確保などについて「先の見通しがない」状態であり、日本学術会議は文部科学省に、(現状では)ILCの日本への誘致は支持せず、日本政府は慎重になるべきという所見を提出しています。

私自身は押井氏の主張を正面から否定する気はありません。ですが日本製の家電すら日本人は自慢できなくなり、日本人自ら中国製やら韓国製やらのものを購入している現在、(岩手などへの経済的効果は置くとして)「日本のもの」とは言えないILCが完成したところで、日本人がどれだけ自信を持てるのかは疑問です。