『天使のたまご』4Kリマスター版制作中、ただし発表方法不明

今度は、押井守監督によるOVA作品『天使のたまご』の4Kリマスター版が既に制作開始されているとの話。2025年に同作が40周年を迎えるためとのことで、こちらは『紅い眼鏡』とは違いクラウドファンディングではありません。ただ現在のところ発売・公開方法についてなど具体的なことは不明で、ただ「4Kリマスター版の作業が始まっている」と、同作の権利を持つ徳間書店より発表されただけです。まだ発売も決まっていないのに、今から発表している理由もよくわかりません。

【押井守 × 天野喜孝】伝説のオリジナルアニメ『天使のたまご』40周年記念・4Kリマスター版 製作決定 | 株式会社徳間書店のプレスリリース

天野喜孝氏による、複雑で緻密なデザインのキャラクターやメカが動く映像美は評価されたものの、セリフがほとんどないこの作品は娯楽作品と呼べるものではありませんでした。当初から「意味が分からない」とさんざん言われ(押井氏によると極めて単純な物語だそうですが)、『紅い眼鏡』に並んでこのような作品を作った押井氏は「わけのわからないものを作る監督」とされ、その後『機動警察パトレイバー』の成功まで、ほぼ仕事を干された状態だったということです。ゆうきまさみ氏や出渕裕氏も、『パトレイバー』の監督に押井氏を迎えることになったとき「『天使のたまご』みたいなものにされるんじゃ」と最初は警戒したとか(伊藤和典氏らは「この企画ならちゃんと『うる星やつら』みたいなものになる」と安心させようとしたそうですが)。

繰り返しになりますがこの作品の映像美は高く評価されており、それを含めて“傑作”と評価するコアなファンもこびりついていて、2013年にはBlu-ray版が発売され現在も購入可能、オンデマンド配信も定期的に行われております(Prime Videoなどで定期的に公開)。絵コンテ集などの関連書籍も発売されました。

一方北米では、同作の編集権まで売られてしまっております。そのためオリジナルではなく、カール・コルパート監督が新規撮影した実写シークエンスと『天使のたまご』のアニメパートを組み合わせた『In The Aftermath』(1987年公開)という映画として公開されました。ただ、押井守を論じた英語書籍を執筆しているブライアン・ルー氏によると、

コルパートのこの作品は、新撮の実写シークエンスと『天使のたまご』のアニメーションをミックスし、最終戦争後の荒廃した世界を舞台にした新しいストーリーを作り上げたものだ。しかし、アニメーション場面を見るだけでも価値はあるものの、コルパートの作品は粗雑で陳腐な駄作といってよく、オリジナルの『天使のたまご』とは比べものにならない。

とのことです(『押井守論―MEMENTO MORI』より)。

フランスのGebeka International社が、『天使のたまご』4Kリマスター版の「世界販売権を獲得(acquired the worldwide sales)」したということです。日本はこの中に入ってないでしょうけど。

Mamoru Oshii To Oversee 4K Edition Of 1985 Animation ‘Angel’s Egg’