田中敦子氏 死去

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『イノセンス』で“少佐”草薙素子を演じ、その他多数のアニメ、ゲーム、洋画・海外ドラマ吹き替えなどで活躍された声優である田中敦子氏が2024年8月20日に死去されたとのことです。

声優・田中敦子さん、61歳で死去 「攻殻機動隊」草薙素子役など|シネマトゥデイ

田中敦子氏についての細かい話は今更なので、本サイトならではの話を書きたいと思います。今までに『攻殻機動隊』の草薙素子を演じた声優は3人。ひとりはPS1ゲーム版『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』における鶴ひろみ氏。このゲームのムービーは、一番士郎正宗氏の原作の雰囲気に近いと言われており、またデジタル技術が黎明期だった当時にあってデジタルエフェクトを使いまくったクオリティの高いムービーが語り草となっています。

そして『攻殻機動隊ARISE』シリーズで、若い草薙素子を演じた坂本真綾氏。坂本氏は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』でコドモトコ(素子の小さい義体)、そして『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』では少女の素子の義体の声を担当していますが、『ARISE』で採用されたのはオーディションの結果だったそうで、最初は『攻殻機動隊』新作における素子のオーディションだという事すら知らなかった、そして「なぜ田中敦子さんがやらないのか」と思いつつも「若い頃の素子を演じるなら、そして敦子さんでないなら自分しかいない」と思いつつ挑んだとか。編者が「プロライターとして最後の仕事。自分の墓碑銘にするつもり」という気持ちで挑んだ『攻殻機動隊 PERFECT BOOK 1995→2017』という本では、田中敦子氏と坂本真綾氏の対談を収録させていただいています。出てからかなり時間が経ち電子化もされていないため今では入手困難になってしまっているようですが、もし機会があれば、そして手元にある方は目を通してやってください。

話を戻して、素子を演じた中で最も有名な田中敦子氏。押井守版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』とその続編『イノセンス』で素子を演じたほか、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズでやはり素子を演じ(「押井版より10歳若く」と言われたとか)、さらにその続編に位置づけられている『攻殻機動隊 SAC_2045』シリーズで他の声優陣と共に素子役に復帰しました。付け加えると実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』でもスカーレット・ヨハンソン演じる“少佐”の日本語吹き替えを担当されています。

田中敦子氏の声や演技の魅力について書くなどという野暮なことはしません(書けるとも思えません)。ただ私は、坂本真綾氏との対談で本当に気さくな姿を見せてくれたことがとにかく印象に残っています。そして対談収録が終わった後、担当編集が「紙面には載せないので、記念写真を撮らせてもらえませんか」と突然言い出しました。私は驚きましたが、田中氏も坂本氏も快く応じてくれ、私も一緒になって写真に収まることになりました。この写真は少なくとも私は誰にも見せたことはありませんが、証明写真以外で私が写真に撮られた最後(最新)のものかもしれません。自撮りとかしないし一緒に写真を撮る友人もいないしそもそも写真に写るのが嫌いだし。

ともかくそれ以前にも、ゲームとして発売され続編も出てアニメ化もされた『うたわれるもの』にカルラ役として出演し、同作のラジオに出ているのを聞いたことがありますが、やはり気さくでノリのいいところも聞かせてくれました。他にも私が特に好きだった『犯罪捜査官ネイビーファイル』などなどなどなど、多数のドラマ吹き替えでも声を聞かせていただきました。

8月20日は私の誕生日だったため(ゲームを立ち上げたときの「おめでとう」メッセージで思い出した)「なんでまた死に近づき、定年で職からも放逐され収入も絶たれる日が近づくのを祝わなければならないのか」と呪っておりましたが、これから8月20日は私にとって“田中敦子さんの命日”です。

改めてR.I.P.