過去のこの手の作品、アメリカと日本が戦争を行なうというのは良くあったが、大抵いい加減な戦力比、非常識な決断を下す司令官、SFとも魔法ともつかない超兵器等が出てくるのが良くあるパターンであった。しかしクランシーはこのテーマを実にリアルに描いている。それは日本が軍事的政治的経済的奇襲によってアメリカを「戦えない状態」に置こうという物である。この作品ではまた現在のアメリカ人の日本観というのも現れていて興味深い。
この作品もライアン・シリーズに当たり、ライアンやクラークといった人物が活躍している。この作品ではライアンは国家安全保障問題担当大統領補佐官として、様々な問題を解決しようと尽力している。また日本語訳はEXECUTIVE ORDERS(邦題 合衆国崩壊)はこの作品の続編に当たる。
この作品からは日本語版の出版は文藝春秋から新潮社に変わっており、訳も長らくライアン作品の翻訳を行なっていた井坂氏ではなくなっている。個人的には極めてこれが残念で、この作品の訳では違和感というか、何かそういった物を感じており、井坂氏の訳が見事だったという事を現す結果となってしまった。
更にこの作品は本国、即ちアメリカでは出版はWITHOUT REMORSEの方が先であり、DEBT OF HONORは出版は後である。だからこの作品をこれから読もうとする人は、それにあわせて「容赦なく」を先に読むほうが望ましい。どうも私には新潮社の態度そのものがいい加減に思える。例えば下巻表紙のF-117だが、この作品にはこの機は登場していない筈だが……。
著者 | トム・クランシー |
訳者 | 田村源二 |
出版社 | 新潮社 |
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