言うまでも無くクランシーの作品では、潜水艦が果たす役割は非常に大きい。『レッド・オクトーバーを追え』は勿論潜水艦の物語である。この作品を面白いと感じた人々は、大なり小なり潜水艦に興味を抱いたことであろう。そしてそれを充たしてくれるのがこの本である。
テレビで特集がやっていたのを見たことがある人もいるだろう、86年に1隻のソヴィエト原潜がバミューダ沖で沈没した。その艦はどうして沈まねばならなかったのか? その時の、そしてそれに至るまでの艦の状況は? そのときにソヴィエトが、そしてアメリカが取った行動は? 乗組員の運命は? それらを事件関係者への綿密なインタヴューで再構築し、見事に一つの真実の物語として組み上げたのがこの書である。
以前にも書いたが、潜水艦は軍事の中でも最も機密のヴェールが厚く、我々の前にその素顔を覗かせる事は少ない。しかしそれはその深海に沈んだ物語を見事に地上に引き摺り出している。潜水艦の真実を見ることが出来よう。
同時に話は逸れるが、クランシー作品でどれだけ氏がしっかりした取材を行い、フィクションながらも真実に可能な限り近い潜水艦の世界を描いたのかということも改めて感じられる。レッド・オクトーバーを追えを読んだ人間なら御馴染みの、「クレイジー・イワン(アイヴァン)」という言葉や、「政治士官」「シャーウッドの森」という言葉が登場する。
著者 |
ピーター・ハクソーゼン イーゴリ・クルジン R・アラン・ホワイト |
訳者 | 三宅真理 |
出版社 | 文藝春秋 |
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