野良犬の塒
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INTO THE STORM トム・クランシー 熱砂の進軍

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ストーリー

1991年湾岸戦争。その地上での戦い、ニュース映像には決して現れない実際の戦闘の光景はどのような物だったのか。指揮官は何を考えていたのか。この本は、かつてヴェトナムで戦い片足を失った、そしてGalf Warでアメリカ第7軍団を指揮したフレッド・フランクスJr.将軍(退役)の視点から見たヴェトナムでの挫折、軍の再建、そしてイラクでの勝利をトム・クランシーが描く。

解説

『湾岸戦争』というと、90%以上の人々が思い描くのはあの『TVゲームのような』ガンカメラで爆弾が目標に吸い込まれていくシーン、そしてバグダッドの上空にめくらめっぽうに撃ち上げられる対空砲火の曳光弾が輝くシーン、そしてイラクのプロパガンダ映像を含む、爆撃により破壊された『ミルク工場』など様々な建物の残骸の映像であろう。これらの画像から、湾岸戦争は航空機による爆撃で行われた戦争であると錯覚を抱きがちだが、その航空攻撃が開始された1ヶ月後には40カ国の国々よりなる連合軍の地上部隊が、砂漠の上を進撃していったのだ。そしてそれによって戦闘は終結した(空軍のみによって終わった戦争というのはないのだ)。
これは湾岸戦争の地上戦のついて書かれた本であるが、内容は大きく別れて2つの部に別れている。まずヴェトナムからペルシャ湾に至るまでの道。これはヴェトナムで従軍し、片足を切断することになったフランクスが軍に復帰して、そしてアメリカ陸軍の建て直しに参加するところが描かれている。

これを読むことによりヴェトナム戦争の別の一面が見えてくる。アメリカ軍はヴェトナムのジャングルに吸い込まれ、ヴェトナムのゲリラ戦法に敗れたということになっているが、果たして本当にそうだろうか? アメリカ軍の損害はマスコミで喧伝されたように本当に大きい物だったのだろうか?
ともあれアメリカ軍はヴェトナムから撤退し、アメリカが支援を約束した南ヴェトナム政府は消滅することになる(多くのアメリカの職業軍人に、それは傷として残った)。自らも傷を負い、片足を失うことになったフランクスはそれでもなお軍に復帰した。誇りを失ったアメリカ陸軍の為に自分が出来ることは何か?
そしてサウディアラビアの砂漠に降り立ったフランクスと新生アメリカ陸軍。ここからは第7軍団長としてフランクスが何を見て、何を考え、何を決断したかが記されている。これを読んだら多くの人々は、軍の指揮官がどれだけ多くのことに頭を使わねばならないかに驚かされるだろう。軍の司令官というものはありがちな小説のように、天才的な閃きや柔軟な思考が出来るだけでは務まらない。長年の訓練と経験とスタッフが不可欠なのである。指揮官は戦場において何を考えなければならないのか、この本はそれを垣間見させてくれるだろう。

出版情報

トム・クランシー 熱砂の進軍
著者 トム・クランシー
フレッド・フランクスJr.
訳者 白幡憲之
出版社 原書房
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