当初私はこの本を書店で見かけたが、「ああ、また日本人の自称軍事評論家とでも言っている奴が、適当にでっち上げた本だろう」とその場で記憶から削除してしまった。だが掲示板の書き込みからその本が実はクランシーのOP-CENTERの日本語版だと知って驚愕。当然激怒した。
以前から新潮のタイトルの付け方について私は何度も不満を吐いていたが、ここまでやってくれるとは…。なんとまあ素晴らしいタイトルだ! このタイトルほど「いかにも時期的に受けそうな題材について扱って、適当に関心を呼ぶことだけしか考えず、内容を適当にでっち上げたという急造小説」という雰囲気を醸し出すことは非常に難しいだろう!
そしてまた訳者が変わっている。この新潮の素晴らしくいい加減な態度!
しかしこの小説、どうにもクランシーの作品という雰囲気がしない。物語自体が短いというのもあるのだが、キャラクター描写も今までに比べるとつっこみが足りないしストーリー展開も今ひとつ、それに『クランシー的描写』というのも少ない(それが訳のせいなのか原文からそうなのかは不明だが)。この作品はトム・クランシーとスティーヴ・ピチェニックの共著という形になっているが、実際にはクランシーはほとんど書いていないのではないかと邪推してしまう。
ところで、OP CENTERの次回作"MIRROR IMAGE"も『あの』新潮文庫から翻訳して出版されるらしい。これのストーリーは大統領選に湧くロシアで大統領候補の暗殺事件が発生する、その背後では帝政ロシアの復活を目指す者の陰が…というストーリーらしい。さて、我らが新潮社は一体どんな素敵な邦題をこの作品に与えてくれるのか? 私の知人は『皇帝復活』を強く推していたが。
著者 |
トム・クランシー スティーヴ・ピチェニック |
訳者 | 伏見威藩 |
出版社 | 新潮社 |
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