野良犬の塒
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Tom Clancy's OP CENTER ノドン強奪

表紙

ストーリー

オプ・センターはその存在を知る者もきわめて少数の、軍事、諜報、政治、心理学などの各分野の専門家を集め、少人数の直接行動部隊『ストライカー・チーム』を持つ、クライシス・マネージメント(危機管理)の特別機関である。そのオプ・センターに初めての本格的な海外での作戦行動指令が下った。
大統領選挙の記念行事が行われていた韓国、ソウルで爆発が起き、市民や政治家の多数が死傷した。そして現場に残されていた証拠は北朝鮮軍の犯行を思わせるものだったが、何かが不自然だ。一方最高度の機密防護を誇るはずのオプ・センター本部にコンピューター・ウィルスが侵入、そのウィルスが見せようとしていたのは、存在しないはずの北朝鮮軍部隊の集結だった。
そして第二次朝鮮戦争を起こそうと目論む韓国の過激派の姿が背後に浮かんでくる。ストライカー・チームは朝鮮半島情勢がどんどん緊迫してゆく中、戦争を阻止するために北朝鮮に潜入する。その任務は、東アジアを戦禍と混乱の渦に突き落とそうとする、ノドン・ミサイルの発射阻止であった。

解説

オプ・センターは、本来クランシーがTVドラマ用に書いた脚本であり、日本ではそのドラマがヴィデオ販売された。レンタルヴィデオ店で見たことがある人もいるかもしれない。その後クランシーはライアン・シリーズとは別に、このオプ・センターシリーズで本を出していた。この度そのオプ・センターシリーズの第1冊目が日本語化され、販売された。そしてその日本語版のタイトルは

ノドン強奪
である。
当初私はこの本を書店で見かけたが、「ああ、また日本人の自称軍事評論家とでも言っている奴が、適当にでっち上げた本だろう」とその場で記憶から削除してしまった。だが掲示板の書き込みからその本が実はクランシーのOP-CENTERの日本語版だと知って驚愕。当然激怒した。
以前から新潮のタイトルの付け方について私は何度も不満を吐いていたが、ここまでやってくれるとは…。なんとまあ素晴らしいタイトルだ! このタイトルほど「いかにも時期的に受けそうな題材について扱って、適当に関心を呼ぶことだけしか考えず、内容を適当にでっち上げたという急造小説」という雰囲気を醸し出すことは非常に難しいだろう!
そしてまた訳者が変わっている。この新潮の素晴らしくいい加減な態度!

しかしこの小説、どうにもクランシーの作品という雰囲気がしない。物語自体が短いというのもあるのだが、キャラクター描写も今までに比べるとつっこみが足りないしストーリー展開も今ひとつ、それに『クランシー的描写』というのも少ない(それが訳のせいなのか原文からそうなのかは不明だが)。この作品はトム・クランシーとスティーヴ・ピチェニックの共著という形になっているが、実際にはクランシーはほとんど書いていないのではないかと邪推してしまう。

ところで、OP CENTERの次回作"MIRROR IMAGE"も『あの』新潮文庫から翻訳して出版されるらしい。これのストーリーは大統領選に湧くロシアで大統領候補の暗殺事件が発生する、その背後では帝政ロシアの復活を目指す者の陰が…というストーリーらしい。さて、我らが新潮社は一体どんな素敵な邦題をこの作品に与えてくれるのか? 私の知人は『皇帝復活』を強く推していたが。

出版情報

ノドン強奪
著者 トム・クランシー
スティーヴ・ピチェニック
訳者 伏見威藩
出版社 新潮社
amazon.co.jpで購入

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