この手の本というとやれ強行突入の方法はとか、やれ特殊部隊で使用している兵器はとか、そういうことばかりの本が多いがこの本はひと味違う。現在の世界では、特殊部隊に要求されているのは戦うことだけではない。それが書かれている本である。
例えばどこかの国に派遣され、その国の兵士や警察をアメリカの特殊部隊が訓練するとき。この時も、ただ教えればいいというのではない。決して高慢にならず、友好的に彼らを導く方法を見いだし、更に戦闘だけではなく、捕虜や容疑者の人道的な扱い方も教えなければならない(これは「暴力的文化」が支配していた国では甚だ厄介だ)。そうしなければ彼ら、即ちアメリカが支援する政府に対する反発感情が高まり、結局国が不安定になってしまうからだ。
またその国の兵士とだけではなく、その国の住民(例えば平和維持任務で派遣されたとき)ともどう接するか。あくまで友好的な雰囲気を作り上げなければならない、銃を持って彼らを監視し歩き回りながらという矛盾した状況の中でだ。住民同士が暴動を起こしたとき、どうやって対処するかという訓練もある。
彼らが相手をしなければならないのは国外の者だけではない。自国のマスコミにどう対処するかという訓練まであるのである。マスコミの、ちくちくと指すような質問をどう対処して敵に回さないようにするか。
クランシーは、(軍の規定により)迷彩服を着て顔に迷彩ペイントを施して演習を見学したそうである。その訓練模様は実に興味深く、そして本の最後にはクランシーの短編小説も書かれている。
著者 | トム・クランシー |
訳者 | 日暮雅通 |
出版社 | 東洋書林 |
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