人狼 JIN-ROH 映画評
アンケートの結果(一部)
沖浦氏をはじめスタッフの方々が見たがっているだろうから、現在当ページで行っている人狼を観た人へのアンケートの一部、ネタばれにならない部分を公開しようと思う。
- 監督の好みによる所も大きいと思いますが、いわゆるアニメ的なハッタリ的な所を極力排した演出を、賛同する所もあれば、もう少し、ハッタリかましてもという所と、観てて両方感じました。ちょっと最後、きれいに収まり過ぎかな・・・。でも、いい映画です。
- 藤原カムイさんのマンガを読んでいたので、おもわず「ニヤッ」とする場面が結構あって楽しめました。作画、演出とも高レベルで非常に満足できました。ただ、一部の場面でデジタルを使っているような感じを受け、その場面が浮いているような感覚を受けました。(カメラを引く動作の所、色の加減も明るすぎたような、、、)
キャラの動作については、日本のアニメというより「ディズニー」に近い感じを受けました。本当の人間の動作を再現しているという意味です。 また、自爆ちゃん似の彼女の声が、ちょっと違和感が、、、でも、何回か見ればそれも消えると思います。見たのが映画観では無かったので、銃の音が??てな感じでしたね。もっと、爆裂音というか激しいんじゃないかなー
- 一度見たくらいじゃ感想なんて述べられん。引っかかるものがあまりにも多すぎる。
- え〜、仕事の関係でパイロット版を見たのですが、どこがおもしろいのかでんでんワカランかった。
- 脚本:「ケルベロス」の時もそうでしたが、またも不本意ながら泣いてしまいました。(その時、後ろの席の年配の方は、鼾をかいていらっしゃいましたが。「特機」のシリーズを全く知らない人は、このストーリーをどう受け止めるのだろう、とは少し思いましたが、個人的には、今回、今までよりも、公安に対する思いが、深まった気がします。
作画:いままで観た事のない、アニメーションの、新しい映像でした。最近のアニメは、ヴィジュアル的にリアリズムを追求し続けていると思いますが、そんな「見た目」などではない、「実感」の伴ったリアリズムが随所に感じられました。心を留めた作画シーンは、ソファーから立ち上がって、歩き出す時に、軽くソファーの背に手を添えて、通り過ぎるところです。
- 全体で見れば大満足の5点満点。数時間前に観た「ヴァンパイヤハンターD」も悪くはないが(かなり良い作品だとは思うが)「全体的にハリウッドすぎる」という感想。アクションに次ぐアクション、ハラハラドキドキのチェイス、観客を飽きさせないのは良いが「人狼」という映画を通して見ると「おとなしい作りの映画」と見えてしまった。
今度は友人を誘って地元で見に行くと思うが、その場合先に「犬狼」を読んでおく様言うべきか、言わぬべきか迷っている。よんでいない場合、私の様に惑わされず新鮮な気持ちで観ることが出来るだろうが、首都警と警視庁の関係や首都警そのものの組織構造等が理解出来ないと思う。逆に読んでしまえば私の様に「原作のストーリーに振り回される」ことになってしまう様な気がして、正直困っています。 - 毎日映画コンクール見てきました。全てにおいて無駄のない作り方で、これぞ日本映画!と言わせるような出来だったと思います。一般公開されたらまた見に行っちゃいますね。多分。
- 影のないセルのリアルな動きがこの作品の時代背景にうまくはまっていると思う。影無しの為か人物の表情を追いやすいし、その分街のショーウインドウや、爆発の光が当ったときの効果が強く印象に残る。また、女を前にした主人公の不器用な動きは見ている側がもどかしいほど。アニメでこんなことを感じさせられたのは初めてでした。(実写では簡単なのだろうけど)
あとヒロインが滑り台ですべるシーンが個人的に好きです。なんかよく動きすぎて笑えてきます。雑誌のインタビューではヒロインの声が良い、というようなことを言っていましたがこの映画には浮いてしまっているようにも感じました。
付き添いで見に行った友人はアニメや映画のマニアでも特に好きでもないのですがよい反応が返ってきました。取っ付きにくくはあるかもしれないけど、見てしまえば引き込まれてしまうものはあると思う。も、もしかして、ヒットしちゃったりして。
御覧のとおり、全体的に評価は高い。今回掲載を見送らせて頂いたアンケートについても高い評価が行われている。世間では、人狼の評価について良い評価しか出ていないので、情報操作が行われているのではないかという意見もあるようだが、これでその疑問も少しは晴れるだろう。因みに筆者は、IGからもバンダイビジュアルからも、「良い評価してね」とかそういうことは一切頼まれていない。
また、ゆうばりファンタランド2000のページにも、ゆうばりファンタスティック国際映画祭の会場で行われたアンケートの結果(こちらは野良犬の塒は関与していない)が掲載されている。
都々目さとしの評
筆者はゆうばり国際ファンタスティック映画祭で『人狼 JIN-ROH』の日本初一般公開を観る事が出来た。ここでは作品のネタばれを避けながら、人狼の評をしてみたい。生憎筆者は一回しか観る事が出来なかったので、あまり正確な評とも言えないのだが。
我々の知らない昭和30年代の日本。この映画では、「ドイツが日本を占領したら」という架空の歴史によって形作られている。ドイツ軍が進駐軍として日本にやってきて、学校では英語のかわりにドイツ語が教えられる世界。冒頭のプロローグのところであのドイツ軍の特徴的なヘルメットを被った兵士が道端で日本人と話しているシーンを見て強い印象を受けた。これは筆者がドイツ軍マニアなのが主な原因だが(あのシーンがソヴィエト兵だったら大して印象は受けなかっただろう)。
昭和30年代の町並みがどれだけ再現できているかという点だが、これは当時を知らない私が論じるのは不適当だろう、それに私は一回観ただけで話を追うのに集中しており、背景まであまり気が回らなかったというのが正直な話だ。しかし決してその点の出来が良くなかったということではない。
我々が皆驚き、そして不安に思った人選、それが伏役の声優に藤木氏が選ばれたことであった。藤木氏はStraydog ケルベロス 地獄の番犬で乾を演じたのだが、はっきり言って演技が下手で、押井氏に「お前は喋るな」とまで言われたという(その藤木氏も、くそ暑いプロテクトギアにくそ重いMG42を持っての撮影では大活躍だったが)。
そんな様子だったので、人狼ではたしてどんな演技になるのかと皆が心配していた。だが人狼では(そもそも伏の台詞は多くないのだが)かなり演技が上達しており、良い感じだった。
脚本については、作中の台詞などで犬狼伝説からの引用がかなり多く、「完全オリジナル」という話を期待していた者にとっては残念だった。確かに話の大筋はオリジナルの話だが。しかし全体的には脚本の完成度は高い。「もっと公安の暗躍などの、政治面などを描いて欲しかった」という意見も聞いたが、私としてはこれはこれで良いと思う。飽くまでこの話は伏と圭の話なのだから。
アニメ雑誌などで言われていたキャラクターの動きだが、やはり凄かった。MG42にぼろきれのように蜂の巣にされる人間の動きから、机の上の書類を示す手の動きというところまで気持ち悪いほどに動く。筆者はMG42の弾帯がじゃらじゃらと取り出されるところを見て「うわーっ」と思ったものである。しかしプロテクトギアがもっとうじゃうじゃ出てきてどかどか戦闘してくれないかと思っていた身としては残念だった。多分「そんなものは描いていられない」という答えが返ってくることだろうが。
西尾氏の影の無い絵だが、最初は違和感を覚えたもののそのうちすっかり引き込まれてしまった。沖浦氏と筆者が話したとき、氏はアニメマニアがあの絵をどのように受け取っているのかを気にしているようであった。もっとも私はアニメマニアというわけではなく、目がくりっと大きい可愛い絵で無いと嫌だということは全く無いが。しかしやはりアニメマニアに対しては受けは良くないだろうとは思う…。だがキャラの演技に魅せられてしまうのだ。
この映画は間違いなく良い映画だ。確実に何度も見る価値があるものである。やはり監督がアニメーター出身というために、演出などがどうしても「アニメーター的演出」に偏ってしまったのが残念といえば残念だが、それも一つの手段だろう。沖浦氏は生粋のアニメーターという感じであり、氏を表現するには「職人」という言葉が一番適当だと思われる。沖浦氏が完全オリジナルの映画を作ったらどうなるのか興味深く、是非観てみたいところだ。