野良犬の塒
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東京都写真美術館レポート

パンフレット 筆者は99年7月19日、恵比寿にある東京都写真美術館に『取材』に行った。
この文章を書いている7月19日現在、いまだに公開日も決まらずにただ『今秋公開』とだけされている『人狼』だが、東京都写真美術館で6月25日から10月3日まで行われている『アニメーションとメディア』という催しで、人狼のプロモーションフィルムの上映や、設定資料などの展示が行われている。それを拝みに行って来たのである。
実のところ、その前の週には同じ場所に沖浦監督が来ていて、講演が行われていたそうだ。筆者がその事を知ったのは全てが終わった後だった。もし始まる前に知ったならば、予定など放り出して直ちに取材に行ったものを…。

覆水盆に帰らず。ともかくここを取材することは、日本で(おそらく世界でも)最大の押井守サイト(そして唯一の押井守サイト)の管理者の義務であると勝手に責任感を覚えて私はそこに行って来た。

さてこの催しだが、一応テーマは『アニメーションについて』となっており、人狼以外にもマッドハウスが製作のアニメ『バンパイアハンターD』のプロモーションや、CGアニメとしてナムコの『エースコンバット3』のデモ、そして最も初期のアニメーションと言えるキネトスコープ(エジソンが発明した、除き眼鏡で動画フィルムを見る機械)などの展示が行われていた。だが内容はかなり寂しく、我々のようにはっきりした目的が無ければ、入場料500円を払って見る価値があるかどうかは疑問である。

では本題に入るとしよう。人狼のコーナーでは、プロモーションフィルムの上映、ポスター、脚本、絵コンテ、セルなどの展示、そして実物大プロテクトギアの展示が行われていた。
プロモーションフィルムでは、予告編(マルチメディア 音と光フェスティバルシンポジウムRealPlayerで見ることが出来たものと同じものである)の他に、製作現場の映像を含めたプロモーション映像、そして原作・脚本の押井氏、監督の沖浦氏、美術の小倉宏昌氏、音楽の溝口肇氏へのインタヴューがあった。しかし、インタヴューについては全員がぼそぼそと喋る上に、隣で上映しているバンパイアハンターDやエースコンバット3の音のせいでさっぱり聞き取れなかったが。
ここでは特機の訓練のシーンもあったのだが、一つ驚いたのはそれが少年エース99年8月号に掲載された犬狼伝説第5話『軍用犬』の訓練シーンとあまりに似ていたことである。おそらく試写を見た藤原カムイ氏が、それに影響されたのであろう。

資料の展示は、人狼の脚本や絵コンテ、身長対比図などの設定資料(設定資料については後日販売されるらしい)、絵コンテなどが展示されていた。身長対比図を見て気がついた点は、犬狼伝説での登場人物である室戸、巽、半田の姿があったが、都々目紅一ら「地獄の三人組」の姿は無かったという点である。
さて、人狼の脚本もガラスケースの中に置かれていた。話が逸れるが以前筆者の元に「人狼の脚本譲ります 興味があれば連絡ください」という、挨拶も何もなしにそれだけ書かれた全く知らない人間からのメールが来た事がある。あまりにも怪しすぎるので無視したのだが。

また、ここで展示されていたプロテクトギアだが(生憎写真撮影は禁止であった)、これはケルベロス版のものであった。しかしどうやら撮影に使われたものではなく単なる張りぼてのようであった。非常に軽そうで安っぽく見え、「コスプレ用衣装」という雰囲気がぷんぷん漂っていたのだが。「左手のシールドの中にモーゼルのホルスターが無いぞ」「腰のホルスターはワルサーPPKには大きすぎないか?」と容赦の無い突っ込みを行っていた私である。

なお、ここでは480円で小冊子も販売していた。「人狼製作日誌掲載!」という売り文句で人狼の表紙だった小冊子だが、人狼について書かれている事は全64ページのうち10ページに過ぎず(更にそのうち7ページはセルの写真だけ)、その上「人狼製作日誌」とは想像通りProduction I.Gのページに掲載されている人狼製作日誌そのまま(しかも抜粋)という有様であった。

また、そこには『人狼通信』なる物も置かれていた。Vol.1とあったが、2以降が出るのかどうかは甚だ疑問。以下は誤字までそのまま写したものである。

「人狼 JlN-ROH」通信 Vol.1

発行:平成11年7月1日
編集:BANDAI VISUAL

映画「人狼」日本凱旋ロードショーに向けいよいよ胎動!!

釜山国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ブリュッセル国際映画祭、シンガポール国際映画祭、アヌシー'99………
そして、ファンタスポルト国際映画祭では、ペストアニメーション賞と審査員特別大賞を受賞――――――
世界各地の国際映画祭、MlFEDやカンヌなどの国際映画見本市で、スクリーニングされた、アニメーションを超えた驚異のMotion Picture 遂に、日本国内上映に向けカウントダウンか始まる!!
映画「人狼」は、押井 守の原作・脚本を基に、ビルボード No.1のセールスに輝いた1995年の映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」でキャラクターデザイン・作画監督をつとめた、新進気鋭の沖浦啓之か初監督デビューの作品だ。沖浦啓之は、これまで、アニメーターとして、クオリティを重視した仕事の持ちぬしとして、アニメーション業界から高い信頼を得て来た。今回は、職人的な作風はもちろんなこと、登場人物たちのドラマティックな演出で、次世代監督の期待と予感を徒佛とさせている。音楽は、ドラマ「ビュア」「星の金貨」「この世の果て」を担当し、大貫妙子・遊佐未森・中山美穂ら多くのアーチストのサウンドプロデュースで知られる溝口 肇。
押井 守の原作である漫画「犬狼伝説」は、1998年に発表され、現在は再収録されたコミックが「Kadokawa Comics A 藤原カムイコレクション [1] 犬狼伝説」として、角川書店より発売されている。また、コミック化されていなかったストーリーが「少年エース」誌上にて8月号から連載か開始されることとなった。
漫画「犬狼伝説」と、1986年の実写映画「紅い眼鏡」1991年の実写映画「ケルペロス-地獄の番犬」は、いずれも押井 守の同一世界観上にあり、3部作的な要素になっている。

日本国内での劇場公開が待ち望まれるが、映画「人狼」は今秋ロードショーを目指して現在準備中だ――――――。

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