「ギブリーズと違って早く安く楽しく」作られたミニパトだが、最初の予定タイトルが押井氏の付けた『ミニパトくん』だったという事は既に何度か語られていた。それが「ミニパト」に正式に決まったのは、「発注されてないのに」西尾氏の手が空いていたので勝手に作ったオープニングのタイトルロゴで、という事だそうである。
そしてこれも何度か話題になっている、押井脚本にあった“某メカデザイナーへの悪口”。
西尾「バンダイが青くなった!」
神山「『よく切ってくれた』と思っただろうね」
桑島「助かりました」「最初見たときに(押井脚本の)この企画はヤバイと思ったんですよ」
さてミニパト第二話の、イングラムのバリエーションが色々と出てくるシーン。「量産型であのデザインはねーだろ」「普通量産型といったら(ガンダムに出てくる)ジムでしょ」(神山)というところ、西尾氏によると「イングラムは最初からジム顔だから」あの劇場版エヴァンゲリオン(I.Gも参加している)に登場するエヴァ量産型のような形になった。
そのときに「試作型」ということで先日触れたダロスの初期型BEM(最初ここで重装アタッカーと書いたのは編者の誤り)をモデルにしたロボット(この時もステージにて「教官のサイトで」と名指しされたが)の他に(あと編者は「核武装型」も元ネタが判らないのだが)、謎として残っていた「ハリセンスペシャルとは一体何か?」これは最初西尾氏も神山氏も気が付かなかったのだが、押井氏は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場する
そして音響について。この時神山氏はほとんど立ち会っていただけで、押井氏(と音響監督の若林氏)で音作りをやっていたそうだが、そのときに押井氏がエキストラの人に、整備員の「ジーク・ハイル!」の正しい言い方についてうんちくをたれていたそうである(*1)。
その後の質問コーナー。「ミニパトの形式で、パロディにしてみたいアニメというのはありますか?」
西尾「千と千尋の神隠し」
神山「赤いんだね(*2)」
さて三話形式のミニパトだが、その場で「どの話が一番好きか」というアンケートがその場で行われた、すると神山氏らの意外なことに(私も意外だったが)一話が好きだという人が結構いた。神山氏は第二話と第三話の勝負と想定していたが、ある年齢以上になると第三話が好きになるそうだ。
神山「(理由は)サラリーマンの悲哀かなあ」
ところで「押井さんのおかげで」東京国際映画祭の金屏風の前に立たせてもらえたという神山・西尾氏だが、そのときミニパト本編より長い一時間ほどの記者会見が行われた。
西尾「そのとき、美人外国人記者の人が途中で帰っちゃって。『ああこれは期待しているMAMORU OSHIIのかっこいい作品ではない』って」
とり「脚本の最終稿が上がったのが1996年なので、忘れていたりありもしないことを喋ってそれが活字になったり」
「性能の低い人狼と言われたけど、それで大成功」「単に性能の低いアニメになるところだったのを、『人狼に見えなくもない』というところまで引き上げてくれたのが(作画監督の)黄瀬さんの功績」「(遠藤氏のところにまわってきた時)『どうしよう?』という原画がたくさんあったし」「おれは(トーキング・ヘッド主人公の)丸輪零か!」「魑魅魍魎の跋扈するスタジオに行くことになったらどうしようと思ったけど、現場はマッドハウスでというから『ああそれならやりますぅ』って」
遠藤「(冒頭の野球シーンで)秦の背番号が8になっていますが、これは13号とあわせて『813』にしたという洒落です。でもこの813で『ああ』っていう人は30過ぎくらいじゃないかな(*4)」
遠藤「(劇中の作りかけのスタジアムについて)横浜国際競技場にロケハンに行った時、この状態でした」「ワールドカップが韓国で開催されるか日本で開催されるか判らない時だったので、『競技場を作り始めたけど韓国でやることになったので放棄された』という裏設定」
遠藤「フランスではハゼがどんな魚か判らない、ハゼのもとの大きさも判らないし魚拓というものもわからないので、(巨大化したハゼ魚拓の)何が異常か理解できない」
出渕氏とゆうき氏が、「冴子が大学で授業をしているときにはメガネをかけさせろ」と主張し、更に「秦の目の前で冴子がメガネを取り、秦がはっとするシーンを入れろ」と執拗に主張したそうだ。
とり「まったくあのメガネっ娘萌えは~!」
『後藤のイメージが違う」「押井後藤は電気こけしなんて言わないだろう」とかいうツッコミがあったことに大して。とり氏がゆうき氏に話したところ「いや、後藤はこう言うよ」と言ったそうである。確かにコミック版の後藤は「添い寝してやろうか」と野明に言ったり、初期OVAの後藤は「しのぶさ~ん」という寝言を言いながら他人の足に抱きついているようなキャラクターだったのだ。それが劇場版1、劇場版2とどんどん硬派なキャラになっていったが。
押井守の二番煎じだの何だのと言われた事に関して。
とり「全然(押井演出と)違うよね」
遠藤「ヘリコプターにブラシが入っていたら押井守なのかと」「『カラスが出ているのが押井守的』とか言われたけど、パト2では鳥が自衛隊で犬が警察であり、警察が鳥を撃ち落としたから怒ったというのが判って言っているのだろうか」
前回も語られた、遠藤氏と高山氏にとっての「初の乳揺れアニメ」13号について。遠藤氏は劇場版ストリートファイターIIのアニメに関わり、それで春麗の乳が揺れていたという話だったが実際には遠藤氏はそちらの作業はしていないそうである。ところでカプコンの人で、春麗の胸が何回揺れたか数えていた人がおり、「ゲーム業界って変だよなぁ」
……等々。しかし、『ミニパト』を追っているうちに私はすっかりWXIIIにも詳しくなってしまった。特にWXIIIというアニメの「秘められた演出意図」「気付かれない演出意図」「誤解された演出意図」という点においてだが、それらを纏めて本にしてみたくなった(恐らくDVDの音声解説でほとんど語られているから意味がないだろうか)。
イヴェントでは最後にWXIIIプロデューサーのバンダイビジュアル杉田氏の挨拶が行われたが、「進展しないので責任とって二年辞めていたんですが、二年後に戻ってみると、二歳の娘が全く成長せず二歳のまま、しかも養育費はないと言われ、
その間に社長も替わっていたので『養育費下さい』といったら『パトレイバーだから育てよう』と言ってくれました」という事である。「こんな『萌え』を排したアニメによくついてきてくれて」「でも神山さんの攻殻の素子はけっこう萌え萌えでかわいいじゃないですか」とかいう話。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』だが、バンダイビジュアル杉田氏によるとCS、「『おそらはかんぺき』の『あにめさいだいげん』」で公開されるそうで、それ以上は口が濁されたが既報の通り地上波での放映も予定されているようだ。
しかし会場のせいか酒が入っていたせいか、このように「教官のサイト」「2ちゃん」「萌え萌え」などという単語がぽんぽん飛び出すイヴェントだった。