野良犬の塒
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イノセンス 公開初日舞台挨拶

観客をお出迎えのバトー2004年3月6日、イノセンス公開初日の舞台挨拶が行なわれた。この公開初日のティケットは、映画館劇場窓口で200、チケットぴあで300販売されたのだが、あっという間に売り切れたようである(映画館劇場では、ティケット販売当日早朝から人が並んでいたようだ)。
このティケットは指定席券ということもあり、3月6日当日はさすがに早い時間から映画館の前に並んでいる人はいなかった。だが日本テレビを始め、TVカメラやら記者のカメラやらはぞろぞろと入場開始シーンを撮ろうとやって来て、一時は「客の数より記者の数の方が多いのでは」という状態にまでなった。

それで入場時間前になると、例によって藤木義勝氏バトーが、バセットハウンドを担いで登場し、人々を出迎えた。

そして上映終了後は、押井監督とバトー役の大塚明夫氏、トグサ役の山寺宏一氏、草薙素子役の田中敦子氏がステージに登り、舞台挨拶が始まった。
押井「本日はどうも有り難うございます。あちこちで散々喋っているので、何を喋ったらいいか判らないんですが、この作品は一言で言えば、Production I.Gという、恐らく今の日本のアニメの現場の一番トップの人間の約半分が、現場で2年間かけて作った作品です。準備を入れたら3年くらいなんですけど、これ以上の作業はできないというところまで、僕自身も自分を追い込むことができて、画期的な作品だと思っています。映画に関しては多くを語る必要はないと思うんですけど、敢えて一つだけ言うとストーリーは大したことありません(笑)。問題なのはストーリーではなく、僕は今回の映画に関しては全シークエンス全カットに詰め込めるだけの情報を詰め込んでいます。その中には様々な寓意を込められています、逆に言うと1カット、1シークエンスそのものがこの映画のテーマを具体化したものだと思ってかまわないと思います。だからどっから見ようと、途中寝ていようがですね、途中入場しようがですね、ある部分を見れば全体に必ず通じる作品という作品を目指しました。というか、一度見ても決してわかるわけがない(笑)。逆にですね僕や現場の気持ちとしては、『一度見てわかられてたまるか』という気合いで作りました(笑)。今日気に入った台詞や気になるところがあったら、またご覧になって欲しいと思います。何度でも何年でもお客さんの視線に絶える強度を目指しました。僕自身達成感がはっきりあります。恐らく10年20年経っても繰り返し観られる作品になったと僕は信じています。出来る限り何度もご覧になって頂いて、動員に貢献して頂くだけではなくて(笑)、繰り返し観て繰り返し語らなければ伝わらない、伝えきれないものというのがあります。僕にとってそういう作品になっていると思います。ありがとうございました」
──次に見る時に、「ここに注目したら面白いかもしれないぞ」というところがあったら教えて頂けますか?
押井「そうですね、一部で言われているかもしれませんが、オープニングの人形があるわけですけど、最後のカットで目がアップになった時、瞬きしたとき、人形の瞳に何かが映っています。恐らくモニターでは絶対見えない、スクリーンで見て頂ければわかると思います。この作品のテーマがそこにありますので、次の機会に確認してみてください」
大塚「主人公のバトーを演じさせていただきました大塚です。これだけの映画を前にして、何故私が前にしゃしゃり出ているのか、マイクにたっているのか、一幅の絵に新たに書き加えるような気恥ずかしさを感じております。とにかく録音するときに、普通のテレビモニターみたいなのでやったんですけど、その時に画面が暗くて口をどのタイミングで動かしたらいいのかわからない、どうしましょうということになって、録音監督にお預けしたんですけど、それが劇場で見るとちゃんと見える。ということはDVDになった時に、暗くて潰れて見えなくみえないために明るさが調整されるんでしょうけど、そうすると別の作品になってしまうと思います。でも劇場でないとわかりません(笑)。僕まだ2回しか見ていないんですが、その都度ちょっとずつ『あっ』というのがあって、まだこれから公開した映画館にちょちょっと見に行こうと思っているんです。なぜならばやっぱり劇場で見ないと、この音響スタッフが苦しんだこの音も家庭で再生する機械ですとどうしてもフルに味わえないというのがありますし、このビッグウェーブに乗っかれたということを嬉しく思っていますし、ですからなるだけ味わおうと思っています。是非1度と言わず2度3度4度5度と見て、そして10年くらい経ったらまた見られるように押井守祭りをみんなでやろうと(笑)そんな思いを込めてご挨拶に代えさせていただきます」
田中「9年ぶりに広大なネットの中から戻って参りました、草薙素子役の田中敦子です。今日ご覧頂いて、草薙素子が出ているのが1シーン、最後だけだと思われた方は、是非もう一度劇場に足を運んで頂いてですね(笑)、素子がもう1カ所出ているところがありますので探していただきたいと思います。1、2年前に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編を作られると伺いましたときに、もしかしたら素子はもう登場しないのではないかと危惧していましたが、こういう形でこのような世界的な作品に参加させて頂いたことを心から感謝しています。有り難うございました」
山寺「本日はお金を払って来場して頂きまして有り難うございます、トグサ役の山寺紅一です。まだ午前中ですが、『おはー!』とやる雰囲気ではないので真面目な挨拶を刺せて頂きますけど(笑)。また押井さんの作品に参加させて頂いて、押井組に入れて嬉しく誇りに思っております。皆さんはもう堪能したと思いますけど、もう一回見て頂くために。この作品に犬がたくさん出ていますけど、犬の声を僕がやろうと思ったのですが(笑)、この映画は音の方も物凄く凝っておりまして、犬の鳴き声もプロのバセットの方に(笑)たくさん鳴いて貰って、何という名前でしたっけ」
押井「ルビーです」
山寺「その名前がちゃんと入っているんですよ、エンドロールに。残念ながら僕はやらして貰えなかった(笑)。僕は十何年犬をやらしてもらっているんですけど、犬の声を(笑)。でもそれくらいリアリティに拘っている作品ですので」
──是非名犬チーズの声を披露して下さい!
山寺「あぅーん!(笑)まあ日テレだからね(笑)。ロビーの方でイノセンスの回数券を売っているそうなんで(笑)。30枚綴りでね(笑)。それくらい孫子の代まで見て欲しい映画だと思います。今日は有り難うございました」
──最後に押井さん、お願いいたします。
押井「この映画の主人公であるバトーという男は僕自身でもあります。そして多分皆さん自身でもあると思います、この物語というのは自分を探す物語でもあるわけですけど、具体的に言うと自分の体を探す物語です。人それぞれに自分の体はどこに でもあると思うんです。僕にとってのバセットがそうであるようにそれぞれの人の体がどこかにあります。それを探す物語です。今日はどうも有り難うございました」

ところでこの日の解説は日テレの福沢アナだったのだが、この人が喋るとどうしても胡散臭く聞こえてしまうのは私の偏見でしょうか。あとインターネットのライヴ中継では、この舞台挨拶の模様を放映した後、石川氏も(英語で)挨拶したらしいが、当然劇場に行っていた私は見ていません。

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