様々な国の出身者を隊員とすることによって政治的に要請国が受け入れやすいようにし、地理や交通の面から根拠地はイギリスのベリフォード(SASもここにいる)に置かれる。テロ事件が発生すると隊員は背広姿でジェット機に乗って現地に向かい、そこで戦闘服に着替えて一緒に送られてきた装備を身に付ける。こうして世界の至る所でレインボーはテロリストを相手にするのだ。
滑り出しは順調だった。スイス、オーストリア、スペインでテロリストが人質を取って立て篭もる事件が発生したが、レインボーは見事にそれを処理して行く。だがその背後でテロリストを扇動する元KGB将校の姿があり、更にその背後にはアメリカの大企業の存在があった。
地球人類の95%以上を死に導く恐るべき計画が始動する。レインボーの隊員は知らぬ間に、地球人類の運命を担うことになる。
レインボー・シックスは一応ライアン・シリーズと位置付けることが出来る。タイム・スケール的には大統領命令の後にあたり、作中では『大統領』としか書かれていないがライアンが大統領の状態 になっていて、アーノルド・ヴァン・ダムやジョージ・ウィンストンといった側近の名前が登場している。
レインボーの指揮官はゲームと同様ジョン・クラークで、突入ティームのうち一つの隊長がディング・シャベスとなっている。そして、隊員にはゲームに登場したエディ・プライスらの名前が入っている (ゲームの隊員の全員が登場する訳ではない)。
小説のほうはこれぞクランシーという出来だ。多面的な動きを描き、追いつ追われつの諜報戦も展開される。ヴォリュームもあってオプ・センターやネットフォース等の『短編』に不満があった人も満足できるだろう。
しかし、出版社がまたもやあの『呪いあれ』の新潮社である。そして新潮社らしいいい加減さというか、またもや翻訳者が変わっている。それで例えばFBI長官ダン・マリーがダン・マレーとなっていたり、今、そこにある危機から登場している“オソ(熊)”ことフリオ・ベガは、名誉の負債ではフリオ・ヴェガとなっていたが、今作ではまたフリオ・ベガに戻ったものの“オーソウ”と呼ばれるようになっていた。だが固有名詞は別として全体的な訳はそれ程悪くは無い。しかしやはり文藝春秋の翻訳者であった井坂氏の訳に親しんだ者にとっては何とも言えない違和感が付きまとうのだが。またタイトルにふざけた名前を付けられなかったことで良しとしなければならないのだろうか。しかしこの本の4巻の表紙、どう見ても第二次大戦の装備にしか見えない。
著者 | トム・クランシー |
訳者 | 村上博基 |
出版社 | 新潮社 |
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