野良犬の塒
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THE SUM OF ALL FEARS 恐怖の総和

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ストーリー

イスラエルは建国以来最大の危機を迎えていた。シリア軍は電撃的にイスラエルを攻撃、情報を得ていなかったイスラエル軍は重大な危機に直面する。
国家存亡の危機の中で、イスラエルは密かに準備していた核爆弾の投下準備にかかる。しかし最高司令部は理性的判断で、直前に核爆弾の使用を取りやめた。
だが空軍基地に被弾して帰還したイスラエル空軍機が墜落、基地は大混乱となる。その中で核爆弾を搭載したイスラエルのF-16が出撃してしまったのだ。
そしてそのF-16もシリア軍の対空砲により撃墜された。だが核爆弾は出撃前に起爆準備をしていなかったため発火状態になっておらず、そのまま機体をはなれ不発弾としてシリア人農夫の畑の上に突き刺さった。農夫はその爆弾を土に埋めると、再び畑を耕し始めた。1973年、第四次中東戦争での事である。

そして現在。イェルサレムで行われたパレスティナ人の非暴力抗議活動に、イスラエル警官が銃弾を撃ち込んでしまう。世界は一気に反イスラエルへと動き始め、アメリカはイスラエル政府を救うため早急に中東和平を纏めなければならなくなった。CIA情報担当副長官に昇進していたジャック・ライアンの、中東和平プランがにわかに注目され、彼自身も和平案を売り込みにイスラエル、そしてサウディ・アラビアへと飛ぶ。

その一方、失われていた核爆弾が再び見出され、イスラム・テロリストの手に渡る。彼らは核爆弾を再び使用可能状態にするために旧東ドイツの核物理学者の協力を得る。そして単なるテロの武器としてその核爆弾を使用するのではなく、更に壮大な作戦のためにそれを利用することを計画した。

冷戦は終わり、全面核戦争の脅威は去った。誰もがそう思っていた。だがその滅び去ったと思っていた亡霊が再び舞い戻る。

解説

この作品の主題は核テロリズム。クランシーは、この作品で核テロが如何に簡単に行なわれ得るかという事を証明してみせた。大抵の映画などではそういった目論見は直前に防がれるものと決まっているが、この作品はそこでは終わらない。それによって始まる全面核戦争の危機をも描いているのである。そしてその事態がどんどんエスカレートする様子の描写が素晴らしい。

大抵のこういった作品ではどこぞの秘密基地が襲撃され(OP CENTERはそういう話だが)、それがそのまま使われるというパターンだったが、この作品では核物理学の知識が展開され、その核爆弾を「改造」して更に強力にしようという試みが行なわれている。その点、つまり核物理学の点においても興味深い作品となっている。

出版情報

恐怖の総和
著者 トム・クランシー
訳者 井坂清
出版社 文藝春秋
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