野良犬の塒
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野良犬の塒 押井守/プロダクションI.G作品 Wiki

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

a stand alone episode
第2話 暴走の証明 TESTATION

脚本=藤咲淳一
演出・絵コンテ=河野利幸
作画監督=浅野恭司
メカ作画監督=玄馬宣彦

Story

剣菱重工が開発していた、陸自の試作思考戦車“HAW206”が暴走し、他の戦車を破壊して播磨研究学園都市にある剣菱の演習ドームから逃走するという事件が発生した。戦車のAIをハッキングしたテロの犯行の可能性もあるため、公安9課に出動命令が下る。だが9課の思考戦車タチコマでは、軍の思考戦車に対抗するには余りに分が悪い。そのためバトー、素子らは取り合えず暴走戦車の追跡を開始し、一方トグサらは暴走の原因を調査する。その結果、数日前他界した戦車の設計者、加護タケシの脳が、彼の友人である戦車整備担当者のオーバの手により戦車に接続されたのが暴走の原因と突き止めた。
加護は生まれつき病弱で、義体化しなければ長くは生きられない体であった。だが彼は宗教的理由により、義体化も電脳化も禁じられていたのである。そして彼は、自分が死んで宗教から解放されたら、自分の脳を戦車に繋いで欲しいという意志を残していたのだ。そして今その戦車が、彼の両親の住んでいる実家の方へと向かっている。恐らく、因果な運命に自分を生んだ両親への復讐のために。
やはり強力な軍の戦車を相手にしているため、9課の阻止作戦もなかなか功を奏さない。剣菱の上層部は企業秘密を守りたいため口が重かったが、荒巻は彼らに掛け合い、新型戦車を阻止するため戦車の情報を提出するよう要求する。その結果、試作のトリモチ型対多脚戦車兵器を暴走戦車に使用、加護の実家の目前でやっと戦車を止めることに成功した。
素子とバトーは加護の脳を戦車から取り出そうとする。だがその時、避難命令が出されていた筈なのに、加護の両親がその戦車の前にやってきたのである。「タケシ……なのかい?」
戦車のガトリング砲が加護の両親へ向けられる。その時素子は彼の両親を守るため加護の脳と接続、電脳攻撃で加護の脳を焼き切った。
加護は本当に両親に復讐するためにここまでやってきたのだろうか? だが素子は、加護の脳と接続したとき、鋼鉄の体を手に入れてそれを両親に自慢しようとする加護の意志を感じ取ったという。加護は本当は両親に対してどうしたかったのか、永遠に誰にも判らない……。

Explanation

この話では、攻殻SACのキャラクターの目玉の一つ、タチコマをピックアップするための話だといえよう。そのために「敵役」の思考戦車、HAW206を登場させて話を展開させている。
原作に登場していた思考戦車のフチコマは、「大人の事情」でSACには登場しないことになった(「大人の理由」については、PSゲーム版攻殻機動隊で使われているためなど諸説ある)。かわりに登場したのがタチコマである。
フチコマはGITSでも登場していない。理由は幾つかあるが、「サイボーグの素子がこんな戦車に乗ったら無敵になってしまう」「マスコット的なキャラなので世界観が壊れる」というものである。この問題は攻殻SACでも出てくることになるが、この話については後述。

さて、このような多脚戦車が果たして実現しうるかという話については長くなるので省くが、ここでは簡単に思考戦車の「砲」について考えてみるとしよう。
2話に登場するHAW206に搭載されているのは120mm滑腔砲だということだが(滑空砲と表記するのは軍事用語として誤り)、こんな短砲身の戦車砲があり得るのだろうか? 現在、存在している戦車の戦車砲は砲身が長い。砲身を長くすることの利点は何かというと、命中精度が上がることと装甲貫徹力が上がることである。砲身を長くすると、砲弾の炸薬が爆発したときに発生したガスが砲身の中で長時間砲弾を押すからである。この辺については犬本5号の「ミニパトのための初級銃砲講座」に書いてあるので割愛する(といってまた手前味噌な宣伝)。
だが「装甲貫徹力」ということであると、現在その意味は失われつつある。かつて装甲貫徹力を砲弾の質量と速度にのみ頼っていた時代と異なり、現在では成形炸薬弾などの特殊弾頭が発達しているからだ。攻殻の世界でどんな弾頭が使用されているかは不明だが、HAW206の砲撃・被弾シーンから見て特殊弾頭の可能性が高い。
一方の「命中精度」という点については現在も重要だ。しかしHAW206のあの砲身の短さでは大した命中精度が得られるとは思えない。だが、最初からこの思考戦車では、長砲身を有することで得られる遠距離での命中精度が求められていなかったという可能性もあり得る。

既に現在、戦車の持つ価値というのは減少しているという説がある。それは対戦車ミサイルの発達が原因だ。対戦車ミサイルは精密に誘導させることができ、戦車の弱点である装甲が薄い天井部を攻撃して破壊することができる。そのため戦車の利点である強力な装甲は無効化されつつある、というものだ。
もちろんこの意見には反論もあるが、攻殻の世界ではこの「戦車無用論」が推し進められ、かつての主力戦車に代わって、あくまで歩兵支援に有効な多脚式の思考戦車が発達した世界なのかもしれない。
タチコマに話を戻せば、タチコマには最初から対装甲車両の戦闘力は求められていないから、対人用榴弾を発射できれば十分である。その点ではあの程度の砲で必要は満たせるだろう。もっとも、あの位置に砲があったら射角が制限されるので不利だと思うが……。
HAW206に対する疑問点としては、「劇中で説明されていた、対戦車ミサイルにハッキングをかけるということは可能なのか?」という点がある。対戦車ミサイルの誘導方法としては何種類かあるが、アメリカのドラゴン対戦車ミサイルなどはレーザー有線誘導である。発射装置のレーザー誘導情報によって制御されながら、ミサイルは発射装置と繋がっているワイヤーを引っ張ったまま飛んでいくのだ。
故にミサイルと発射装置のみの閉鎖されたネットワークであり、従って、ミサイルに接触しない限りはハッキングは不可能になってしまう。
また赤外線画像誘導方式というミサイルも存在する。ロックしたときミサイルに取り付けられたカメラが捕らえた標的の映像に向けて、ミサイルが自動的に誘導して飛んでいくというものだ。要するに誘導装置はミサイルのスタンドアローンになっているのである(撃ちっぱなし方式と呼ばれる)。このタイプのミサイルに対しては熱光学迷彩などが有効ということになるが。

さて第2話で特徴的なのはその風景である。GITS攻殻が「アジアのどこかの未来都市」というのに対して攻殻SACでは、はっきりと風景が日本であるという設定にされている。完全な架空の世界を構築すると多大な設定を必要として作業量が増えてしまうという現実的な問題もあったためだが。
元々原作者の士郎氏は神戸在住で、氏の作品も神戸近辺が舞台ということにされている。そしてSACの設定も基本的にこれを引き継いでおり、作中に出てくる“新浜市”も神戸近辺のように描かれている。作中の橋は明石海峡大橋によく似ているし、作中に出てきた播磨研究学園都市も兵庫県に実在している。

原作コミックでも、タチコマ(原作コミックでは思考戦車はこの名になっている)に天然オイルを与えるという話はあったのだが、攻殻SACではさらにこの設定が膨らまされ、後々に影響してくることになる……。

しかしこの2話、やたらと素子の胸や尻を強調したカットが目に付く気が。

I.G - STAND ALONE COMPLEX - 第2話 紹介

第1話 公安9課 SECTION-9 解説へ
第3話 ささやかな反乱 ANDROID AND I 解説へ

Distribution

パッケージ 製品名 価格 備考 購入
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 01 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 01 6,300 第1話「公安9課 SECTION-9」
第2話「暴走の証明 TESTATION」
初回版は収納BOX及び公安9課IDカード付属。
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