野良犬の塒
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ロボットに「心」は宿るのか?
~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~(1/4)

2005年1月19日、金沢工業大学にて行なわれた公開講座 実験空間“創造学”にて、“ロボットに「心」は宿るのか? ~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~”という講座が行なわれた。出演者は神山健治氏と、作家・薬学博士の瀬名秀明氏(Amazon.co.jp)。
ここでは、当日のリポートを匿名希望の方より提供して頂いたので、その人物の同意を得て、ここに掲載したい。
この講座は瀬名氏が司会を務め、神山氏がコメントするという形式で行なわれた。

日本とロボット

瀬名「神山氏にとってのロボット観とは」
神山「出発地点は『マジンガーZ』 、その後は『機動戦士ガンダム』」

ロボットには主に二種類のカテゴリーがある。

  1. 自立系
  2. 操縦系

『マジンガーZ』は操縦系の先駆けであり、『ガンダム』はその発展系。

瀬名氏がここで操縦系の例として『パトレイバー』を挙げる。

神山「ある意味パトレイバーという作品がリアルロボットの究極系ではないか、というところまで行ってしまった。日常性を描きすぎるあまり、お話の主体が人間の方へ向いてしまい、ロボットモノでロボットを主体として扱う必要がなくなった。作品中でのロボットというものの存在意義が消失し、ロボットアニメというジャンルの寿命を早めてしまったのではないか、という感覚を抱いている」

瀬名氏がパトレイバーとHRP-2が同じ出渕裕氏によってデザインされたことを挙げる。HRP-2が会津磐梯山を踊る映像も紹介された。
HRP-2、人間と一緒に会津磐梯山を踊る
東大と産総研、HRP-2で「会津磐梯山踊り」に成功 (MYCOM PC WEB)

瀬名氏「現実に存在するものにまで、その影響力を少なからず与えようとしているとも思える」

日本のロボット・そのあらまし

瀬名氏が日本のロボットの簡単な歴史を紹介。

瀬名「ヒューマノイド型ロボット研究の歴史は1960年代、日本から。
ワボット1、ワボット2(参照 早稲田大学WABOT-HOUSE研究所早稲田ウィークリー 岐阜県各務原市テクノプラザ内 WABOT-HOUSE)で二足歩行やピアノ演奏も行なわれるが、その後しばらくその流れは途絶えてしまう。しかし、その後つくば万博等でロボットが出品され、ホンダP1等に結びついていく流れを形成していくが、そのヒューマノイド型ロボットについては、その用途がもう一つはっきりしない。しかし、日本から世界へ。日本国内では、国から地方へとロボットを開発しようという動きは広まっている」

最近のロボットの例としてアクトロイドが紹介された。
kokoro新着情報:新型人体型ロボット「アクトロイド」
News:空を飛び、感情を理解し、自然な表情を見せる――進化するロボットたち
(アクトロイドは愛知万博 NEDOパビリオンでも展示予定 ITmedia ライフスタイル:次世代ロボット大集合――愛知万博NEDOパビリオン

『擬体エージェント』と義体

瀬名氏から経済産業省によるネットワークロボットの分類表や擬体エージェントについて説明がなされる。
総務省 ネットワークロボット実現に向けた取り組み
【ROBODEX2003レポート】フォーラム - ロボットのネットワーク対応で新サービスが生まれるか(1) (MYCOM PC WEB)
LifeStyle:総務省、ネットワークロボット研究会を開催

瀬名「神山氏にとって、攻殻機動隊としての擬体≒義体というのは、どういう風に捉えてられていたのか?」
神山「原作の士郎正宗氏も医療用の義手・義足の延長線上のものとして描かれているが、身体機能の拡張も可能である。しかし、可能性の増大にはカタルシスは存在しない。むしろ、悲壮感を漂わせるものになりがちである。SACにおいては、できるだけ悲壮感というものが漂わない方向で制作した」
瀬名「悲壮感といえば、『2nd GIG』の11話“草迷宮 affection”が非常に悲壮感漂う話で印象的だった。あれは、物語中では義体技術が未発達であるが故の悲劇であるが、どうか」
神山「あれは技術として義体の制御が過渡期だったゆえの悲劇。しかし、技術としてどこまで精密な動きをさせれば、人体の代替物となりうるのかという指針がない。具体例として、『草迷宮』の男の子同様、左手のみで折鶴を折ったことがある人もあるかも知れないが、少なくとも、僕はできた。スタッフにも仕事ということで強要してみたが、1/3くらいの人はそれができる。義体で折り紙を折ることができる必要は“人間”としては必要なのではないか。
しかし、ジェイムスン型義体のように人間的な部分は、仮想体験で補い、肉体は不要という考え方が生まれる可能性もある。が、人が人であるためには皮膚感覚というものは必要な存在であると思う。

ロボット開発は日本だけか

瀬名氏により、世界のロボット開発の紹介。フランスの“BIP2000”韓国の“ヒューボ”ロシアの“アルネ”が挙げられる。

瀬名「韓国の“ヒューボ”やロシアの“アルネ”に代表されるように、世界各国でも二足歩行ロボットが開発され始めた。海外のキリスト教圏では、宗教上の理由により、神の領域を侵犯しかねないという理由で忌避する傾向にあったが、スター・ウォーズC-3PO等の影響か、序々に変化が生じている。ROBO-ONEの流行、ガレージでロボットを作る時代を迎えている。対して、日本は元々八百万の神思想が根付いていることから、ロボット開発に対して抵抗がなく、世界をリードしていた」

また、ルーシーという、サケード・視線で感情を訴える/読み取るという技術の開発がある実例が上げられた(参照 Wired News - 想像力の獲得を目指す猿ロボット『ルーシー』 - Hotwired)。

ロボットに「心」は宿るのか? ~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~(2/4)

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